予選会見の終盤、ストフェル・バンドーンが予選3位を獲得した隣のJ-P.デ・オリベイラの方を向いて、左腕の時計の位置を指さした。“いつまで続くんだ?”というようなジェスチャーだった。その少し前には、会見の質疑応答があまりにバンドーンに集中していたため、オリベイラが同じく予選2位で会見に並んでいた石浦宏明にジェスチャーで後ろのドアを指し“俺たちは帰ろうぜ”と冗談を交えていた。そのくらい、初めての富士でスーパーフォーミュラ3戦目にして初のポールポジションを獲得したバンドーンの予選の走りは強烈で、会見ではメディアの質問を一手に受けることとなった。

SF第3戦富士の予選トップ3会見で石浦は「すごい」、オリベイラは「スーパータレント」と素直にバンドーンの実両を認めた。
SF第3戦富士の予選トップ3会見で石浦は「すごい」、オリベイラは「スーパータレント」と素直にバンドーンの実力を認めた。

 バンドーンの初PPの衝撃は、まずはタイムから読み取ることができる。バンドーンが記録したポールポジションのタイムは1分40秒778。2番手の石浦は1分41秒050で、約コンマ3秒差。3番手のオリベイラが1分41秒132で、8番手の中嶋大祐が1分41秒289と、100分の15秒差に6台のマシンがひしめく接近戦の中で、2番手にコンマ3秒差を付けたバンドーンの走りは、まさに圧巻といえる。

 バンドーンと石浦のセクタータイムを比較すると、セクタ−1、セクター2は石浦がコンマ1秒ずつ勝っているが、セクター3はバンドーンが石浦を約コンマ4秒上回る。このセクター3の攻略が、バンドーンに初PPをもたらす要因となった。上り勾配のきつい低速コーナーが続くセクター3はトラクションが重要で、雨からの乾きかけの路面では、もっとも乾いてグリップするラインを見つけることが鍵となる。

 そこに、もうひとつバンドーンのすごさが見える。バンドーンは初めての富士で、どのように乾きかけの路面でベストのラインを見つけることができたのか。

「他の人と違うところを走ってみないと違うものは得られないと思っていました。本当にどこがいいラインなのかわからない状況で、ましてや自分でコクピットで運転していたら、どこにドライのラインがあるのか、なかなか探しても見つけづらい。とにかくいろいろなところを探してみようと走ってみて、一番いいフィーリングのグリップを見つけて、最後のアタックに活かすことができました」とバンドーンは最後のアタックを振り返る。

 富士はトヨタのホームコースでもあり、それこそTDP出身のドライバーは数え切れないほどの周回を重ねたコース。だが、熟知したコースとはいえども、天候の違いによって路面の乾き方は異なり、ベストのラインはその都度、変更する。今回のようなダンプコンディションでは経験の差は少ないと言えるかもしれない。しかし、それを考慮しても、バンドーンがベストのラインを見つけることができたのは、偶然とは思えない。

■データをベースにコース攻略と走りを修得する欧州スタイル

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