上位の戦略が同じ方向にいきそうななか、5番手スタートから逆転する活路を探るためのギャンブルだった。結果、失敗だったことは確かに事実だ。

 ソフトでスタートする2ストップという選択はなかったのだろうか。ソフトのダッシュ力と軽量の併せ技なら、最初のスティントでトップまでいけた可能性が高まったのでは? 田坂エンジニアは「もちろん、考えました」。ただ、各陣営が充分なテストをできているわけではないスタート前の状況下において、「ウチの場合はソフトへの信頼を確立しきれていなかったんです。ミディアムでスタートして、次にソフトを履いて、場合によっては10周くらいで2回目のタイヤ交換をして最後はミディアムに戻す、という2ストップを基本に考えていたくらいですから」。

 ところがレースになってみると、「意外とソフトがもったんです」。そこで塚越と田坂エンジニアはソフトで走った中間スティントを15周まで伸ばし、最終スティント(17周)でもソフトを履くというオプション方向に作戦をスイッチしていったのであった。

「ウチだけでないでしょうけど、いろんなことがレース前の予想とは違ったレースだったと思います。テストが(セット数的に)充分とはいえませんでしたし、温度条件も違いましたから当然なんですが、レースになったら意外とソフトがもってタイムも良くて、逆にミディアムでの走りがもうひとつになったりして……。これがセットに依るものなのかどうか、ちょっとモヤモヤした気持ちですね」。田坂エンジニアは開幕戦の戦いをそう総括する。

 今後の250km戦では一般的に考えた場合、速い方のタイヤ、つまりソフトでどれだけ長く走れるかが決勝のキーファクターになると予測される。その意味では今回ソフトで好感触を得たと思われる塚越、そして関口といった面々とその陣営には明るい材料といえるのはないだろうか。

 田坂エンジニアといえば、2000年代の一時期、当時はNAKAJIMA RACINGで小暮卓史とともに多回数ピット作戦を駆使し、レースを沸かせ、幾度となく結果を残してきた知将である。

 当時のローラ・シャシーと違い、その後のスウィフト〜ダラーラでは燃料タンクの大きさや形状、高さ的な位置や燃費等々の諸条件の絡みから、燃料軽量のメリットを出しにくい状況であることを田坂エンジニアはしばしば訴えていたものだが、全戦タイヤ2スペック制の今季なら、250km戦であっても作戦バリエーションは増えてきそうだ。仮に2ストップが現実的でない場合でも、1ストップのアレンジの方向性は確実に増すだろう。

 REAL RACINGと塚越はスーパーGTも含めて今、流れがいい。今回も、ギャンブル策は成就せずともそこで大崩れしなかった点は(外野の視点からは)高く評価できる。スーパーフォーミュラ初優勝(塚越個人の2勝目)に向けて、機は熟しつつあるように思えるところだ。

本日のレースクイーン

池永百合いけながゆり
2026年 / スーパーGT
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