■故・山田エンジニアに届け。WAKO’Sの弔いレース

 2009年にトムスから移籍し、チームの陣頭指揮をとってきた名参謀・山田健二エンジニアが亡くなった。その後の最初のGTのレース。セッティングは事前のテストで山田氏が考案した仕様がそのまま持ち込まれている(テストでは総合3番手のタイムをマーク)。予選で「今までにないくらい緊張した」という大嶋和也は、PPに匹敵するタイムをマークした。

 じつは持ち込んでいたタイヤはZENTとは違い、ある意味コンサバ傾向のスペック。さらにウエイトも16kg積んでいることから、PPとの0.170秒差はないに等しい。だが決勝では残念ながらZENTが履くタイヤの方がコンディションにマッチしたよう。別スペックかつ軽量マシンが前に行き、そのなかではベストの結果となる5位となった。

■ルーキー坪井が完璧な仕事。可夢偉の“留守”を守る

 ルーキーの坪井翔がこれほどの走りを見せるとは、いったい誰が予想しただろう。レギュラーの小林可夢偉がWEC世界耐久選手権参戦のため欠場。その代役となる坪井は悪天候の影響で、練習走行は「わずか9周」という状況で決勝に臨んだ。第1スティントで相方ヘイキ・コバライネンがトップに立った瞬間の表情は喜ぶというより、むしろこわばっているように見えたのはそのためか?

小林可夢偉の代役を務めた坪井翔
小林可夢偉の代役を務めた坪井翔

 ところがいざコースへ出ると、坪井は好タイムを連発。さらに、スティント終盤のセクター2で全体ベストを出すなど完璧なタイヤマネージメントも披露した。坪井はこれまでGT500のテストに参加してきたが、今回の富士と合わせても「合計30周程度しか走っていない」。にも関わらず富士では見ごとに40周弱を走りきった。

■開幕戦絶不調だったDENSOが復活。一時はトップ快走

 開幕直前のテストから謎のアンダーに苦しめられ、それが前戦岡山まで引きずっていたデンソー。だが今回は完全復活を遂げ、序盤から第2スティント終了までトップを走った。

 開幕戦までチーフエンジニアを務めていた田中耕太郎氏がルマンに移籍したため、今回からそれまでデータエンジニアだった笠井昭則氏が就任。セットアップと持ち込みタイヤは田中エンジニアが決めたものから「変えていない」と笠井氏。タイヤはZENTと同じスペックで、これが当たりだった。2回目のピットでモチュールに逆転されたが、「先に入ったもん負け」となるのは承知。それでもSC導入の可能性を嫌い、あえて余裕を持って入ったものだ。逆転はされたものの、「いいレースでした」と笠井氏は笑顔だった。

■他のGT-Rの状況。カルソニックはふたりの妥協点が見えた

 モチュールの活躍の陰で他のGT-Rの状況はどうなっているのだろうか。カルソニックの小河原宏一エンジニアは「予選は4輪脱輪で13番手になったけどタイムでは8番手だったので、本来の位置からスタートしていたらもう少しいけたはず。レースペース的には悪くなかった。特に路面が冷えてから」。

予選アタックで四輪脱輪がありベストタイム抹消の憂き目にあったカルソニック IMPUL GT-R
予選アタックで四輪脱輪がありベストタイム抹消の憂き目にあったカルソニック IMPUL GT-R

 また、ヤン・マーデンボローと佐々木大樹はドライビングスタイルが大きく違う。「難しいですよね(笑)。でも今回お互いの妥協点が見えた気がします」。

 クラフトスポーツはモチュール同様ミシュランを履くが、スタートはミディアムソフトだった。「想定したよりも路面温度が上がってしまった」と宮田雅史エンジニア。第2スティント以降はモチュールと同じミディアムにしたもののタイム差は残った。新体制で走行時間が欲しい状況を考えると、公式練習の時間が短縮されたことの影響が大きかったかもしれない。

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