チャンピオンシップに向けて
要となる1000km
土屋武士の作戦とは?

 そして迎えた大事な大事な鈴鹿1000kmレース。このレースには第3ドライバーに山下健太選手を起用しました。これは長いレースの中で、できるだけ私がエンジニアの時間を多くとって戦略を考えられるようにという意図ですが、我々のチームに「次代の若者を育てる」というテーマがあり、また健太はフォーミュラトヨタ・レーシングスクール時代から見ていても間違いなくプロになれる才能を持っているドライバーだという確信もあったので、プロとしてオファーをして乗ってもらいました。

 これで500経験のある私に、これから500に乗るであろう2人の才能溢れる若手というラインナップに。なんだかこれだけでもイケる気がしてきました(笑)1000キロという長丁場で集中を切らさないようにミスなく戦うためには、やはりしっかりとした戦う準備が必要です。とにかくできるだけの準備をしてサーキット入りしました。

 フリー走行はタカミツから。ところが走り出すとすぐにエンジンがバラつき始めます。どうやらエンジンの補機類にトラブルが発生し、交換しなくては走れません。

 コイル、プラグ、インジェクターを交換するために40分ほどロスしました。仕方がないのでまたもやセットアップはなしで、レースでたくさん走ってもらう健太に残りの時間を乗ってもらい、私は2周、タカミツは最初に乗った5周だけで予選を迎えることになりました。

 ここ数戦おきているトラブルは、マシンが2年目に入って色々なところに負担がかかってきている部分が順番に出てきている状況です。もちろんレースの度にトラブルが出そうなところは新品に順次交換をしているのですが、いっぺんにすべてのパーツを交換することはプライベーターにはできません。

 特に昨年は振動に悩まされていたので、その後遺症がどこかに残っているのか……。まぁ、やるべきことはやっているし、運よくフリー走行で出てくれているのでラッキーなんですけどね。

ドライバーのコメントが正しければ
マシンの精度は高くなっていく。
では、ドライバーの精度はどう高めていくのか?

 そしてまたもやセットアップできずに予選を迎えますが、バランスは特に問題ありません。第4戦菅生以降、テストで煮詰めたベースセットに、サーキット毎の微調整と、気温など気候の影響の微調整を施して持ち込んでいるセットアップの完成度の賜物です。

 この部分は私のエンジニアとしてのチャレンジですが、テストで得た根拠が正しければ、必ずマシンは速くなるはずという論理に沿って作りこんでいます。これは言い換えると、ドライバーのコメント(センサー)が正しければ、必ずマシンは速くなるという論理です。

 ですので、タカミツはその精度を求められるので大変なはず(笑)でもそれは直接結果につながるので譲れません!そうやってドライバーというものは鍛えられていくんですね。

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