さらに発表会後半では、2024年と2025年にスーパー耐久のST-TCRクラスでヒョンデ・エラントラN TCRに乗ってチャンピオンに輝き、2026年はANEST IWATA RacingからスーパーGT GT300クラスにデビューするリ・ジョンウもゲストとして登壇。ジョンウは本国のワンメイクレースやタイヤテストなどでIONIQ 5Nの乗車経験も豊富ということで、織戸とともにIONIQ 5Nについてトークを繰り広げることに。織戸はまだIONIQ 5Nでのサーキット走行が未経験でこれからテストを迎えるということで、“先輩”のジョンウにEV-GPでうまく戦うためのノウハウを尋ねた。
まずジョンウは「IONIQ 5NにはNGB(N Grin Boost=一時的にモーターの出力を引き上げる機能)というパワーボタンがあり、使うと650馬力というハイパワーで走ることができます。相当なハイパワーですが、それでも、IONIQ 5Nは4輪駆動でありLSDも備わっていて安定してトラクションが掛けられるので、安心して攻めていいですよ」と、まずは不安を払しょくするアドバイス。
すると織戸は、「バッテリーはエネルギーマネジメントや温度管理も大事になりそうですが、戦い方のコツはありますか」と第2の質問。ジョンウは「バッテリーの温度管理は、エアコンをつけて車内温度を下げておくことで、バッテリーの温度も下げるという技があります。ただ、電気の使いすぎにつながるのでエアコンは直線だけ使うようにしましょう」と回答するなど、どんどんトークはディープなEVレース談義に進んでいった。
「エネルギーマネジメントを考えると、プッシュするのはどのタイミングが良いですか?」(織戸)
「NGBは650馬力でフルパワーになりますが、使い続けるとバッテリー残量が最後まで保たないです。戦略としては、僕は早めに使ってギャップを作る戦略が多いですね。それでも、同じ作戦だった仲の良い選手はバトルに熱中してNGBを使いすぎてしまい、最後までバッテリーが保たなかったこともありました(笑)。IONIQ 5Nのレースはこうした難しさや楽しさもあるので、織戸選手もバッテリー残量などを計算してNGBを活用できるようになったらレースを楽しめると思います」
続けてジョンウは「IONIQ 5Nは前後の駆動配分や回生ブレーキの強度をドライバーが細かく設定することができて楽しいんですよ」と明かすと織戸は、ますますレースが奥深くなる要素の登場に「どのモードが速いとか、こだわりのセッティングとかあるんですか?」とすかさずツッコんで質問。ジョンウは次のように丁寧に回答した。
「ドライビングスタイルやコンディション、セッティングなどにもよりますが、基本的にはどれでも戦えると思います。ただ、僕は後ろ寄りの駆動配分が好きですね。あとは回生ブレーキを強めるとリヤがとても効くようになるので、ブレーキングでフロントを沈ませたくない時は回生を強めるべきで、逆なら抑えると良いですね」
「それが純正で使えるというところがIONIQ 5Nの魅力的なところです。IONIQ 5Nは実質ほぼレーシング仕様に近いくらいにチューニングされていて、自分が韓国で出ているレースでもブレーキやリヤウイング、スリックタイヤなどを追加すれば、すぐに楽しいレースになるし、駆動配分のセッティングでもタイムが上下するので、きっと楽しめると思います」と完璧な回答で先輩ぶりを披露した。
トークセッションの最後には、ヒョンデのNブランドを統括し、IONIQ 5Nを生み出したジューン・パーク常務からもサプライズメッセージ映像が映し出され、「茉彩さん、ヒョンデNファミリーへようこそ。ぜひモータースポーツファンの仲間たちが作り上げたIONIQ 5Nのドライビングを楽しみ、日本中のモータースポーツファンと感動を分かち合ってください」と織戸のアンバサダー就任を歓迎し、発表会は終幕となった。
今回の発表会では、参戦カテゴリーの明確化、EVレース支援、織戸のアンバサダーの起用など、HMJが2026年に向けて積極的にモータースポーツ活動を展開していく姿勢が示された。日本法人としての取り組みがどのような成果を生むのか、そして織戸が全日本EV-GPを通してIONIQ 5Nのどのような魅力に触れていくのか、今季の動向に注目していきたい。



