F1での長いキャリアを経て、今は現場から離れた生活を送っているが、豊富な情報源を持つニック・リチャーズ氏のコラム。裏情報を知る彼が、F1の政治問題をテーマに、独自のシニカルな視点で時事に切り込む。

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■バーレーンGPが驚くべき形で復活

「やれやれ、成功したがゆえの代償というやつだろう」。ベルギーGPの週末、昔からの知人が電話口でそう冗談めかして言った。

 今年のF1カレンダーにバーレーンGPが復活するという驚きの知らせを耳にした時のことだ。その開催地は……なんとセパンだという。

 ちょっと待ってくれ。私の記憶では、セパンはクアラルンプールのすぐ近くにあり、そのクアラルンプールはマレーシアの首都だったはずだ。

「クアラルンプールってマレーシアにあるんじゃなかったか?」とつぶやいた途端、妻は、「この人、とうとうおかしくなったのかしら」という顔をして、救急車を呼びそうな勢いだった。それで、事情を説明して、安心させなければならなかった。

 もちろん、彼女にとって大切だったのは、私が完全にボケてしまったわけではないという事実だけだった。彼女は私の仕事の世界で何が起きているのかを理解しようなどと、生涯で一度たりとも思ったことがない人なので、この話題について詳しく聞く気はなく、さっさと部屋を出て行ってしまった。私が味わっていたドメーヌ・デュポン・カルヴァドス1972年をグラスに注ぎ足してくれることさえなく、だ。まったく、優しさというものはどこへ行ってしまったのだろう。

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