ピットに戻った松下は別のソフトタイヤに履き替え、今度は18周のロングラン。トラフィックに引っかかった2周以外は全て1分24秒台を並べる安定した走りを見せた。次のランでは異なる空力パーツを試し、計45周を走ったところで午前中のセッションは終了となった。
本番は午後に入ってからだった。4セットの新品スーパーソフトでの15周コンスタントランが4本用意され、松下はマシンとタイヤの勘所を探りながら徐々に攻めていった。
「ブレーキングを攻める僕の走り方だとリヤがオーバーヒートしてしまって、5周目までは良いんだけどその後にペースが落ちてしまうような感じで。でもランを重ねるごとにそれがどんどん良くなっていきました。3本目のランですごく良くて1分21秒998が出せたんです。でもそれも少しミスがあってのタイムだったんで、4本目では結構いけるなと思っていました。でもダウンフォースを大きく削っていったらそれが全然ダメで、最後のセットはダメになってしまって……」
最後に残された僅かな時間でピットストップ練習などを行ない、計121周を走行。ほぼ全てのチームが予選シミュレーションでスーパーソフトやウルトラソフトの新品を投入しチャージラップを含めて4MJをフルに使ったタイムアタックをしたのに対し、ザウバーは一度もパフォーマンスランをやらなかった。つまり30kgを超す燃料搭載量と、1周2MJしかチャージできないハンデを松下は背負っていたわけだ。
結果的に3本目の新品スーパーソフトを使った89周目の1分21秒998が松下の自己ベストとなり、トップから4.874秒差で13台中最下位という結果に終わった。
ザウバーC36のポテンシャルとプログラムの内容を考えれば、当然と言うべきだろう。ある意味では、ザウバーは松下のドライビング能力とフィードバック能力に一定の評価を与え、チームにとって意義のあるデータ収集のテストを優先したとも言える。
「セクター2は待つ感じのドライビングでした。パフォーマンスランをやれたら全然違ったでしょうけどね。タイムはどのくらい上がったんだろう……1秒くらいかな? 少なくとも(今日のプログラムの走りの中でも)理論上はあと0.5秒は速く走れたはずです」