CFDはいわばバーチャルな風洞である。車体の周囲を流れる空気を可視化し、流量を数値化するのが主な目的だ。何十何百ものアイデアをCFDに入れ、その中で最も有望な数種類のスケールモデルを製作し、風洞にかける。

 風洞テストでは至るところに取り付けられたセンサーによって、実走行にできるだけ近いデータを収集する。現状ではCFDを補完するものとして、風洞以上に優れたツールはない。

 風洞内に置かれるのは、実車の60%のスケールモデルである。風洞内ではブレーキング時のピッチング、コーナリング中のローリングなど、挙動変化の際の空力特性の変化も測定される。

 実走行にできるだけ近づけるため、スケールモデルはムービングベルト上に置かれる。空力エンジニアたちはあらゆる状況を考えた負荷を模型に掛け、データを収集する。ある一定のコンディションでのダウンフォース量がたとえ良好な数値を見せたとしても、実際のサーキット走行ではほとんど意味がないと考えるからである。

(第3章その2に続く)

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