その直後に始まったアブダビ合同テストは、さらに厳しい現実が待っていた。
「前日の準備日も含めて、3日間、ずっと徹夜で仕事していました」という森は、テスト最終日には疲労がピークに達し、サーキットで仮眠したほどだった。

 しかし、現場でのこのような対応が一緒に仕事をしていたマクラーレンのスタッフやドライバーからの信頼を得る結果に結びつく。

「苦しい状況でもアロンソをはじめマクラーレンのスタッフが自分を信頼して、きちんとコミュニケーションをとってくれました。成績よりも、そういう人間関係をきちんと築くことができたことは良い思い出でもあるし、財産となっています」(森)

 後任の湊谷圭祐エンジニアに対しても、「ホンダだけでF1をやっているわけではないので、一緒に仕事している相手との信頼関係を作ってほしい。失敗しないことよりも、時には自分を信じてもらうために失敗したことをさらけ出す勇気も大切。そうやって腹を割って話せる関係を築くことで、判断が難しい状況で出した指示に対して『あいつが言うのなら、やってやろう』と従ってくれる」と、森はエールを贈る。

 現場での担当は外れた森だが、今後もイギリス・ミルトン・キーンズにあるHRD MKから後方支援する。森のような経験豊富なベテランが、きちんとサポートする役に回るようになったホンダ。組織の層は確実に厚くなっている。

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