39周目にライコネンはベッテルを先行させ、ベッテルは首位に立った。しかしこの間に11秒あったギャップは7秒まで縮まり、タイヤのダメージも進んだ。フェラーリの決断は遅すぎた。

 42~43周目にターン6で雨が降り始めたが、まだ局地的な雨でドライタイヤでも充分なコンディションだった。中団グループの何台かがギャンブルでインターミディエイトに交換したが、水量が少なすぎたためすぐにオーバーヒートして再びドライタイヤに戻さなければならなかった。

FER「雨はかなりヘビーになりそうだ、注意しろ」

VET「まだ大丈夫だ、他のエリアはまだドライだ。今はステイアウトする」

FER「ステイアウト、ステイアウト。ウエットに換えた連中はタイヤが壊れてまたピットに戻っている。雨は弱まっている」

VET「さっきの周、何かフロントフラップのパーツが飛んだよ」

FER「あぁ、映像で見た。エアロのロスは大きくないから大丈夫だ」

 フェラーリがあと2~3周で上がるとみていた雨は、想定よりもやや長く降り続いた。51周目、レースエンジニアのリカルド・アダミはあと1分ほどの我慢だとベッテルを落ち着かせるように伝えた。

FER「シャワーはすぐに上がるよ、1分ほどだ。今はセーブして雨が上がってからプッシュを再開しよう」

VET「まだ大丈夫だ」

FER「君自身が大丈夫なら大丈夫、ステイアウトしてくれ。BOTのペースは31.8(1分31秒8)。注意しろ、難しい局面だが落ち着いていけ」

 その矢先の出来事だった。52周目のターン13で僅かにグリップを失ってグラベルに飛び出したベッテルのマシンは、それほど速い速度でなかったにもかかわらずタイヤバリアに突き刺さった。ギャップを失ったことへの焦りから、僅かに限界を超えてしまったのかもしれない。

母国優勝のチャンスを逃してしまったセバスチャン・ベッテル

VET「あぁ! XXX! なんてこった! XXX! みんな、すまない……XXX!(ドイツ語で) コース上に留まっているだけで良かったのに!」

 ステアリングを激しく叩きながら悔しがったベッテルは涙声でチームとそして満員の大観衆に謝った。しかし彼らが失ったものはあまりにも大きかった。その背景にあったのは、単なるチームオーダーを巡る諍いではなく、フェラーリのチーム全体としてのレース運営のまずさだった。

母国優勝のチャンスを逃してしまったセバスチャン・ベッテル

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