依然としてハミルトンの後方にはフェルスタッペンが秒差で続き、ハミルトンにプレッシャーを掛けてくる。ハミルトンはタイヤをいたわりながらなんとか抑え込むという状況が続くが、50周目を迎える頃にはいよいよ左フロントタイヤのグレイニングが悪化してグリップが大幅に低下してしまったとハミルトンは訴えた。

 この時点ではすでにメルセデスAMGもミディアムタイヤ選択が誤りであったことを確信していたが、ピットインすれば抜けないモナコでは再浮上の目はない。コース上に留まり、首位のポジションを守り続けるようハミルトンを鼓舞するしかなかった。ミディアムタイヤ選択を決めた最終責任者であるチーフストラテジストのジェームス・ヴァレスも無線で直接ハミルトンに語りかけた。

ハミルトン:これは問題かもしれない。左フロントはもう死んでいるよ

メルセデス:できるだけ引き延ばしてくれ。ピットインはできない

ハミルトン:僕らはレースを失いかけているよ。このタイヤをこれ以上マネージメントすることなんて無理だよ、もう死んでるんだ

メルセデス:前と同じペースで走ることができればフェルスタッペンを後ろにホールドすることはできるよ

ハミルトン:フェルスタッペンを後ろにキープすることはできないよ、ボノ(ピーター・ボニントン/ハミルトンのレースエンジニア)! 見れば分かるだろ!?

メルセデス:大丈夫だ、ここまでずっとフェルスタッペンをホールドし続けてきたじゃないか」

ハミルトン:このタイヤで走らせ続けるなんて何を考えているか理解に苦しむよ。ミラクルを期待するしかないよ!

メルセデス:ルイス、ジェームス(・ヴァレス)だ。君ならやれる、我々はできると信じているよ

 ハミルトンはフェルスタッペンからのプレッシャーに晒されながらもグリップのないタイヤをいたわり、首位を守り続けた。目の前のヘイローは自身が被ったヘルメットと同じく赤く塗られ、『Niki we miss you』の文字が刻まれていた。亡くなったニキ・ラウダに捧げるべく、どうしてもこの勝利は欲しかった。それはハミルトンのみならずチーム全員の思いだった。

 残り10周を切ったところでレッドブルはフェルスタッペンに“モード7”の使用を指示し、パワーユニットを通常のレースモードよりもややパワフルなセッティングに変更させた。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

 この無線を察知したメルセデスAMG陣営はすでに6戦にわたって使用し寿命が近付いてきているコンポーネントであるにも関わらずオーバーテイクボタンの使用を許可し、ここぞという場面ではこれを使って防御するようハミルトンに指示を送った。

メルセデス:フェルスタッペンがパワーモードを与えられた。オーバーテイクボタンを使って良いぞ

ハミルトン:あぁ、それは良いニュースだね

 ハミルトンから返ってきたのは、さらに状況が苦しくなるのかという嘆きを含んだ皮肉の言葉だった。

本日のレースクイーン

松田蘭まつだらん
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