ふたり舞台で進んだレース展開に誰もついていけなかった。予選2番手のボッタスは、オープニングラップ半周で二度接触し、緊急ノーズ交換を強いられテールエンドに。予選4番手シャルル・ルクレールと5番手セバスチャン・ベッテルのフェラーリ勢はレースペースを欠き、40秒以上も離されて終わった。
予選6番手ガスリーは、スタートで出遅れポジションを下げてしまい周回遅れ、まったく不本意な結果となった。彼らの中のひとりでもハミルトンに追従する3番手がいたなら、メルセデスのストラテジストはあのような“2ストップ”を判断するのは難しかっただろう。フリーストップ可能なポジションだったからこそ、勝負に向かう決断ができたのだ。
戦術として48周目にピットに呼び入れたのは、同じ2位ポジションのままで攻勢に転じられる唯一の実践的な実行手段。コクピットのハミルトンは一時、疑問に思っていたが自力でペースを上げ、勝機をきっちりつかみとった。王道を行く彼らの地力をレッドブルとホンダは見せつけられた。
レースに戻ると、トップ4以外は全車が周回遅れにされた。5位カルロス・サインツJr.(マクラーレン)から14位ダニエル・リカルド(ルノー)までが1周、15位ダニール・クビアト(トロロッソ)から18位アントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)までは2周、19位ロバート・クビサ(ウイリアムズ)は3周。
2019年夏の今の『総合戦力構図』があからさまになったハンガリーGP。後半にそなえフェラーリは難題を抱えこみ、2勝したレッドブル・ホンダもさらなる課題を鬩ぎあうなかで初めて知った。そうさせたのはメルセデス・チームとハミルトンだ。ファクトリー閉鎖となる夏休みはあっても、彼らには無いような日々が続くのか。何年も言っているようにF1クライマックスはこれからだ――。