「そのため、我々が行う開発作業の大部分はチームにおいては通常あまり用いられないCFDで行っているものの、そうしたバーチャルなシミュレーションの結果を現実のシミュレーションで裏付けていくことを想定している」
「また、我々は60%スケールではなく50%のモデルを選択し、風洞でかなり長い距離を走らせることにした。そうすることによってマシンの乱気流の実態を最も良く調べられるからだ」
マシン後方に発生する気流は、一般的にオーバーテイクや別のマシンの直後につけたドライバーの走りに影響を与える。シモンズは、実験において2台目のマシンを1台目の後ろに配置する方法を採らなかった理由について、以下のように説明した。
「その方法は2008年に実施した。またオーバーテイクに関する研究も2009年に行っている。そのときは4分の1スケールのモデルを使わざるを得なかったが、それは実際に小さすぎた」とシモンズは語った。
「そのため今回はそうしないことを決めた。ザウバーの風洞ほどに大きな設備でも、現実にはひとつの形状で、2台のマシンを相当接近させなければならないだろう」
「我々がやろうとしているのは、実際のシミュレーションにCFDを用いることだ。実験は単に相互の関係を確認するために行っている」
F1の研究作業の進捗状況と、そこからより接近した面白いレースやもっと多くのオーバーテイクにつながるような知見が得られているのかを問われて、シモンズは研究結果が「実際に私がプロジェクト開始当時に想定していた達成目標を上回っている」と答えた。
「現時点のマシン形状については、素晴らしい実験結果を得ている」
FIAのシングルシーター部門の技術責任者を務めるニコラス・トンバジスは、広範囲に及ぶ研究開発プログラムで非常に有益な結果が得られている語る。
「今のところは大きな驚きがあるわけではない。気流の乱れについては、現行の50%レベルと比べて5~10%になっている。ただし、実験する厳密な形状その他の条件によって結果は異なってくる」とトンバジス。
シモンズは、進行中の研究開発プログラムから得た知見やデータはF1の全チームと共有しており、一方でいくつかのチームからも独自の研究結果を提供してもらっていると語った。
「各チームも非常に協力的だ。リソースを持つチームは多くのプロジェクトに参画してくれているし、進捗状況はすべてチームに共有されている」とシモンズは付け加えた。
「我々は数カ月おきにミーティングを行っており、またマシンの形状を知らせている。それを各チームがそれぞれのCFD環境下で走らせ、実験結果を我々にフィードバックしてくれている」
「それぞれが、できるかぎり関与してくれている。もちろんリソースを投入する余裕がないチームもあるがね」
「ある段階に到達するまでは、すべてのチームの実験結果は共有される。それ以降は、それぞれが新たなルールのなかで作業を続けていくことになる」
2021年型マシンの製作が目前に迫っているかのようだ!