ところで今回のレースでは、残念ながらまたもレースディレクターとスチュワードの問題が発生しました。これはボッタスがターン4で止まった際、ダブルイエローが出ていた時に起こりました。

 ロマンの後ろを走っていたサインツJr.はダブルイエローの区間でDRSを使用して、ロマンとのギャップを縮めました。その後SCが出動したのですべてのクルマ間のギャップが詰まり、この時に縮めたギャップはアドバンテージにはなりませんでした。

 しかし、問題はダブルイエローという安全を第一に考えなければならない状況でDRSを使用していたという事実です。サインツJr.はダブルイエローの区間に入っても、止まっているクルマはもっと先にあるから、最初の数100メートルはDRSを使って車速を上げてもOKだと自分で判断したわけです。

 この行為に対してレース後に何のペナルティも科せられませんでした。このような行為を容認していては、これから先どんな事態になるかわかりません、ウチのチームマネージャーがスチュワードに話しにいっても埒が明かなかったので、僕が話しに行きました。結局あまり実りのある話しにはなりませんでしたが、そもそもドライバーに『ここの区間は安全かどうか』を判断させる余地を与えるべきではないんです。

 今回のスチュワードのひとりだったエマニュエル・ピロは、他のクルマも全開で走っていたし、サインツJr.がターン4のブレーキングポイントの手前100mくらいのところでリフトオフしているので問題ないと言いましたが、話の焦点はそこではありません。もちろん全開で走っているのも良くないですが、それを許容しているからと言っても、次のステップであるDRSも使っていいのかと言ったらそれは違います。

 アメリカGPの終盤にケビンがマシンを止めてイエローが出ていた時にDRSを使ったドライバーがいたので、この件はブラジルGPのドライバーズブリーフィングでも話題になりました。システム上DRSを使えないようにはしないけれど、ドライバーが自分で使わないようにするという話があったにも関わらず、サインツJr.はDRSを使い、ペナルティを受けませんでした。こんなにいい加減な話がどこにあるでしょうか。

 万が一これで事故が起きたらどうするのか……。正直なところ、チャーリー・ホワイティングが亡くなって、裁定判断の基準が崩れている状況です。彼はドライバーやチームに対してしっかりと基準を示して手綱を握っていましたし、みんなから一定のリスペクトを受けていました。

 チャーリーの裁定に疑問があって話しに行ったことも何度もあります。その場合は常にきちんとした議論ができました。同意するかしないかは別にしても、チャーリーはちゃんと話を聞いて理解してくれるので、いつも有意義な会話になったものです。

 しかし、彼の後を継いだ今のレースディレクターはまったく違います。あまり自主性を持ってこのスポーツをもっと良くしていこうという姿勢が見られません。とても残念ですし、F1の将来にとって不安です。

■最終戦アブダビGPに向けて

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