今年の第10戦イギリスGPで、初めて『スプリント予選レース』を導入することが正式に決まりました。F1側はグランプリの3日間をもっと価値のあるものにしたいと考えていて、スプリント予選レースをはじめ、グランプリを2日間開催にする案などについて様々な話し合いを行ってきました。

 僕自身は会議には出席していませんが、スプリント予選レースに関しては、エンジニアリングの観点からタイヤの使い方やパルクフェルメ規則、ポイント配分などを議論し、それをまとめてマネージャーやチーム代表が出席する会議で話し合ってもらいました。

 週末のフォーマットも変わり、金曜日にFP1と予選、土曜日はFP2とスプリント予選レース、日曜日にレースというスケジュールになります。ウチは新人ふたりというラインアップなので、スプリント予選レースによる影響はあると思います。FP1で2セットのタイヤを使って走っただけでは、とてもその後の予選でクルマの限界を引き出すことはできません。ですから経験のあるドライバーと新人とではどうしても差が広がります。

ミック・シューマッハー(ハース)
2021年F1第4戦スペインGP ミック・シューマッハー(ハース)

 またスプリント予選レースの結果で日曜日のグリッドが決まるということは、土曜日のミスやアクシデントが日曜日にも影響するということですが、個人的にはこれはあまりよくないんじゃないかなと思います。たとえば他車にぶつけられてスプリント予選レースをリタイアすると、日曜日のレースを後方からスタートしないといけなくなるので“泣きっ面に蜂”状態です。

 だから僕はスプリント予選レースと日曜のレースをまったくの別物(結果が影響しないレース)として扱ったほうがいいのではないかと考えていて、あくまで個人的な案ですが、土曜日のFP2を日曜日のレースのための予選にしてもいいかなと思いました。金曜日に通常のノックダウン方式の予選があるので、同じことをしてもおもしろくありません。使えるタイヤの数も限定して、FP2の1時間という時間のなかでタイムを出すというやり方にしても良いのではないでしょうか。

 覚えている方もいるかと思いますが、2019年の日本GPでは台風の影響で土曜日のセッションがキャンセルになり、もし日曜日の午前中に予選ができなければ、FP2の結果がそのままレースのグリッドに反映されるという状況でした。こういう場合はFP2のどのタイミングでレースに向けて燃料を積んで走るのか、いつ予選アタックをするのかなどを考えなければならないので、各チームごとの考え方が見えておもしろいのではないかと思います。

 ちなみにあの時は路面が一番いいセッション終盤にルノーがアタックをかけましたが、他チームは燃料を積んで走っていたので、彼らは2台ともセクター1でトラフィックに引っかかってタイムを出せませんでした。通常の予選は時間が短いのでみんなやることはほぼ見えているし、タイミングも読めます。しかし1時間のセッションで予選アタックとレースに向けた準備もしなければいけないセッションだったら、なかなか相手の動きを読むのも難しくなります。まあ、これはちょっと冒険的すぎたみたいで通りませんでしたけど。

 グランプリ週末のフォーマットが変わるので、見た目的には大きな変化に見えますが、これでもF1としては保守的な動きだと思います。失敗がないように物事を少しずつ変えていっているのである程度は仕方ないですが。土曜日に100km走ってこの週末は誰がレースで速いのかがわかって、スプリント予選レースが日曜日のプレビューにならないことを願いますが、とにかくやってみないとわかりません。新しいものを試してみるのはいいことですからね。

小松礼雄(ハース エンジニアリングディレクター)
2021年F1第4戦スペインGP 小松礼雄エンジニアリングディレクター

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