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F1 ニュース

投稿日: 2021.06.03 13:08
更新日: 2021.06.03 15:59

【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第6回】コースに慣れることが最優先。現状を逆手に取ったタイヤの使い方がカギに

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F1 | 【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第6回】コースに慣れることが最優先。現状を逆手に取ったタイヤの使い方がカギに

 レースでは、最後尾からスタートしたミックがターン6のヘアピンでニキータを追い抜いたものの、その後第1スティントでミディアムを履いていたウイリアムズについていくことはできませんでした。それでもまあまあよくやってくれたと思います。

 30周目にふたりの順位が入れ替わったのは、ミックに燃料計のセンサートラブルが起きたからです。トラブルを解決するためにはステアリング上のスイッチをいろいろと操作しなければなりません。しかしこの難しい市街地サーキットで細かくスイッチをいじりながら速く走ることはできず、ミックは直ぐに30秒ほどタイムロスしてしまいました。

 この後なんとか問題を解決して、37周目にピットインした後にフリーエアーで走った際は、安定しており、50周目以前には青旗に手こずっていたニキータに追いつきました。ただミックはこの週末すでに2回クラッシュしていましたし、これ以上クルマを壊せないので、ニキータとレースをせず、最後まで完走するよう指示を出しました。

ミック・シューマッハー(ハース)
2021年F1第5戦モナコGP ミック・シューマッハー(ハース)

 以前にも書きましたが、今年はクルマが速くないので、レース戦略を決める際に青旗のタイミングをどうしても考慮しなければなりません。今回に関しては20周目以降にウチのクルマに対して青旗が出されると予測されていて、実際に最初に青旗を振られたのが21周目でした。

 サーキットによりますが、5、6台のクルマを青旗で抜かせると約20秒ほどロスしてしまいます。つまりほぼピットストップ1回分に相当するタイムロスがあるので、せっかく1ストップ戦略を採っていても、2ストップと同じことになってしまいます。ニキータはミックより早めの34周目にピットインしましたが、これ以上引っ張るとまた青旗を掲示されてしまうので、その前のタイミングでハードタイヤに交換しました。

 上述の通り、モナコは追い抜きがほぼ不可能なので1ストップ戦略を採ります。第1スティントをどこまで伸ばすかというと、ポイント圏外からのスタートならば本来は50周目辺りまで伸ばしたいんです。そうすればセーフティーカーを利用してのピットストップを行う可能性も増すわけです。しかし、今のウチのペースでそこまで伸ばすとかなりの数の青旗を処理しなければいけないのでタイムロスが大きくなります。ですから、そこまでに引っ張る意味がないんです。

 これがソフトタイヤでスタートした大きな理由のひとつです。ソフトが限界を迎えるよりも前に青旗対策でピットインすることになるのは明白だったので、ソフトを履いてスタートや1周目でのポジションアップに賭けようと決めたのです。前のウイリアムズはミディアム、角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)選手はハードだったので、1周目にチャンスがあるかもと期待したのですが、残念ながらそうはならず……。この1周目とセーフティーカーが絶対的な速さに欠けるウチにとっての唯一のチャンスだったんですが、残念ながらセーフティーカーも出ず、為す術はありませんでした。

ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第5戦モナコGP ニキータ・マゼピン(ハース)

 今回の収穫は初日からニキータが週末を通してスムーズに走ってくれたことです。ミックに大きく遅れることもなかったので、彼の自信にも繋がったと思います。FP1ではふたりとも徐々にタイムを上げていきましたが、ミックの場合は最速タイムを出した後にトラフィックにひっかかってそれ以上タイムを上げられなかったので、見かけ上はニキータが上にいますが、トラフィックを考慮しなければミックの方がやはり速かったです。

 残念だったのは、ミックがFP3でクラッシュしたこと。ミックは攻めすぎたと認めていて、結構落ち込んでいました。クルマはかなり壊れていて、予選までに修復しようと思えばできたかもしれませんが、高いクオリティでそれができたかというとそうではありません。ギヤボックスも交換しないといけなかったので、5グリッド降格ペナルティを受けると結局最後尾になるので、予選を諦めて、きちんとクルマを修理することを優先しました。これはミックの今回の反省点です。

 次戦はこれも市街地コースのバクーです。ここはモナコと違って追い抜きが可能ですし、最高速を稼ぐためにある程度グリップ(ダウンフォース)を減らしてでも空気抵抗を削らなければいけません。市街地コースのグリップしない路面でダウンフォースを削ったクルマで走るのは特に新人ふたりにとっては容易ではありません。とにかく今年はいろんな状況を経験して、どんどん成長していってほしいです。

ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第5戦モナコGP ニキータ・マゼピン(ハース)
ミック・シューマッハー(ハース)
2021年F1第5戦モナコGP ミック・シューマッハー(ハース)


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