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F1 ニュース

投稿日: 2021.08.06 09:25
更新日: 2021.08.06 10:08

ただの親バカではなかった⁉︎ アストンマーティンF1の裏にあるストロール父の壮大な戦略【大谷達也のモータースポーツ時評】

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F1 | ただの親バカではなかった⁉︎ アストンマーティンF1の裏にあるストロール父の壮大な戦略【大谷達也のモータースポーツ時評】

 その前に、ローレンスが実権を握る直前のアストンマーティンについて、簡単におさらいしておきたい。元日産のアンディ・パーマーがアストンマーティンのCEOに就任したのは2014年のこと。

 パーマーは、経営難に陥っていたアストンマーティンを立て直すため、セカンド・センチュリー・プランを立案した。

 毎年1モデルずつ新型車を投入し、これを7年ひとサイクルとして、以降はフルモデルチェンジを順次行っていくというのがセカンド・センチュリー・プランの骨子で、2016年にまずDB11を発表する。

 続いてヴァンテージ、DBSと既存のモデルを刷新したのち、2019年には同社初のSUVであるDBXをローンチ。

2016年に登場したアストンマーティンDB11
2016年に登場したアストンマーティンDB11
2018年登場のアストンマーティン・ヴァンテージ(写真はF1エディション)
2018年登場のアストンマーティン・ヴァンテージ(写真はF1エディション)
同じく2018年にリリースされたアストンマーティンDBSスーパーレッジェーラ
同じく2018年にリリースされたアストンマーティンDBSスーパーレッジェーラ

 さらにミッドシップスポーツカーのヴァンキッシュ、電気自動車のSUV、電気自動車のサルーンをデビューさせるはずだった。しかし、DBXをリリースしたところでパーマーは解任。DBX以降のニューモデルはいまだ世に出ていない。

アストンマーティン初のSUVとして、2019年に発表されたDBX
アストンマーティン初のSUVとして、2019年に発表されたDBX

 では、後を引き継いだローレンスは、なにをしたかというと、まず2台の電気自動車計画(いずれもラゴンダ・ブランドで発売されるはずだった)を棚上げ。

 さらにメルセデスAMGのCEOだったトビアス・ムーアスを引き抜いてパーマーの後任に据えると、ミッドシップカー・プログラムの推進を指示したのである。

メルセデスAMGの会長兼CEOを務めていたトビアス・ムーアスは、2020年8月よりアストンマーティンCEOに就任した
メルセデスAMGの会長兼CEOを務めていたトビアス・ムーアスは、2020年8月よりアストンマーティンCEOに就任した

 実は、カタログモデルのヴァンキッシュ以外に、アストンマーティンは、ヴァルキリーとヴァルハラという2台のミッドシップスポーツカーを限定モデルとして発売する計画を立てていた。これらはローレンスの買収後も予定どおり進められている。

6.5リッターのV12エンジンをミッドに積むヴァルキリー。ハイブリッドシステムも搭載されている
6.5リッターのV12エンジンをミッドに積むヴァルキリー。ハイブリッドシステムも搭載されている
新型V6エンジンの開発を凍結し、メルセデスAMG製V8をベースとしたハイブリッドを採用予定のヴァルハラ
新型V6エンジンの開発を凍結し、メルセデスAMG製V8をベースとしたハイブリッドを採用予定のヴァルハラ

 ここまでを整理すると、以下のようになる。すなわち、パーマーは(1)既存のアストンマーティン・モデル(DB11、ヴァンテージ、DBS)+SUV(DBX)、(2)ミッドシップスポーツカー(ヴァンキッシュ、ヴァルキリー、ヴァルハラ)、(3)電気自動車(ラゴンダ・ブランドの2台)の3本柱をラインナップの主軸に据えようとしていたが、ローレンスは(3)を中断。(1)と(2)を今後の屋台骨とするつもりなのだ。

 ただし、(2)ミッドシップスポーツカーはアストンマーティンにとって新たなカテゴリー。しかも、この市場にはフェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレンなどの強豪がすでに存在する。

 そういったライバルの間に割り込んでビジネスを成功させるにはどうすればいいのか?

 その答えはモータースポーツ、それもフェラーリやマクラーレンが凌ぎを削るF1グランプリへの参戦が最適であることは論を待たない。これこそ、アストンマーティンがワークスチームとしてF1に参戦する最大の理由といって間違いない。

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