■ロズベルグ自身が失ったものも大きい

 しかしそういったことは、ロズベルグの問題ではない。結局のところ、彼はF1に何の借りもない。もしあるとしても、3年間にわたるタイトル争いを演じ、最終的にトップに躍り出たことで役割は果たしている。1チーム独占状態の時代において、ロズベルグはハミルトンの連勝を阻止した。批評家たちは、この事態に感謝すべきである。

 まずロズベルグには、代わりがいる。F1はスーパースターを失ったわけではない。ロズベルグはメルセデスが成長するうえで重要な役割を果たしはしたが、すべてが彼を中心として築き上げられたわけではない。一度きりのチャンピオンは、歴史的な記録を残してもいない。さらに言えば、現実的にいまは2017年のメルセデスのシートを得ることができないすべてのドライバーが、2018年のこのシートを狙って争うことになるかもしれない。それが、次のストーブリーグをさらに魅力的なものにするだろう。

 もちろん、ロズベルグはF1にスパイスを効かせようとして引退したのではない。彼は彼自身と、まだ年若い家族のために決断をした。本当に勇気のいる決定だったことだろう。ほんの数カ月前の7月、ロズベルグはメルセデスとの契約を2018年末まで延長している。つまりは今後2年間に渡って得られるであろう利益に、背を向けたことになる。メルセデスの提示する基本給が変わらなかったとしても、タイトル獲得によってスポンサーからの収入は間違いなく上がっていたはずだ。

2016年第16戦マレーシアGP リカルドのため“シューイ”をするロズベルグ
2016年第16戦マレーシアGP リカルドのため“シューイ”をするロズベルグ

 いちドライバーの立場として考えた場合、さらに重要なのは、ロズベルグはもう二度とF1のタイトルをかけて戦うことはできないということだ。懸命に努力を重ねて、目指す位置にようやくたどり着いたドライバーに、それは苦痛を与えることになるだろう。ロズベルグがハミルトンを倒すために、毎戦全力を尽くしてきた15カ月間のことだけを言っているのではない。この結果は子供の頃から目指し続けてきたものであり、彼はF1で成功を収めるために20年以上にわたってレースに打ち込んできたのだ。

 ロズベルグは、後になって退屈するかもしれない。リタイア後の彼の人生は長い。グランプリでのレースが彼のすべてであったことを考えると、喪失感を覚えるだろうことは、想像に難くない。人生をかけての目標を達成し、本人が言うところの「山の頂上」にたどり着いたいま、一体どこへ行こうとしているのだろうか?

(パート2に続く)

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