■レッドブルがリードするシステムと、成功の原動力となるテスト装置

 昨年はレッドブルも、この領域で大きく進歩した。最新のサスペンションデバイスにより、コーナーでは強いレーキ角がもたらす空力的アドンバンテージを利用しつつ、ストレートではリヤを沈めてドラッグを最小化していたのだ。

 このレーキ角の効果は、クルマの総合的なコンセプトによって変わってくる。したがって、たとえばメルセデスにレッドブルやマクラーレンと同様の強いレーキ角をつけても、すぐにパフォーマンスが向上するとは限らない。他の空力パーツが、すべてそれに合わせて考えられていなければ、十分な効果は期待できないからだ。

 レッドブルが、2016年シーズンを通じてフェラーリを上回る成績を残したのは、他のチームが油圧ピッチ制御(HPC)サスペンションと呼ぶシステムを、うまく使いこなしたことにあると考えられている。

 一昨年までは頻繁に空力アップデートを持ち込んでいたレッドブルが、昨シーズンは不思議に思えるほどアップデートの回数が少なかった理由も、おそらくそこにある。実際、彼らはシーズン中に仕様の異なる前後のウイングをいくつか試した程度で、どのグランプリでもクルマの空力的なワーキングウインドウを最大化するためのセットアップに専念していることが多かった。

 そして、レッドブルがこのHPCサスペンションを使いこなすことができたのは、おそらく彼らがフルシャシー・ダイナモメーターを導入したためだとされている。VTT(バーチャル・テスト・トラック)とも呼ばれるこのテスト装置は、あらゆる面で実際にコースを走るマシンの状況を再現し、パワーユニットも含めたクルマ全体をシミュレーター・ループの中で「走らせる」ことができるというものだ。

 この装置ではサスペンションも実際の走行時と同じように作動し、マシンをコースへ送り出す前に、空力とメカニカルグリップの両面で、あらかじめセットアップの方向性を決めておくのに役立つ。また、コースの直線部分ではクルマのリヤエンドを下げて、ダウンフォースとドラッグを減らしてストレートスピードを稼ぐという制御も、これによるテストを通じて可能になった。レッドブルにとって、ルノーエンジンの弱点を少しでも補うことは、きわめて重要だった。

 レッドブルのHPCの使い方は、メルセデスとはやや異なるアプローチと言える。だが、どちらのシステムも、全体としてラップタイムを向上させるため、シャシーのあらゆる側面の相互関係を改善しようとしていることに変わりはない。

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