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特集

投稿日: 2020.12.07 19:00
更新日: 2020.12.07 19:16

モータースポーツ基礎用語


F1 | モータースポーツ基礎用語

これだけ知っていれば、もう戸惑うことなし/F1基礎用語辞典(2)

マニュファクチャラー

直訳すれば製造業者。F1では特にパワーユニット製造業者を指す。2020年はメルセデス、フェラーリ、ルノー、ホンダが該当。

メカニカルグリップ

ウイングやフロアなどで発生させるダウンフォースに起因するグリップではなく、サスペンションの動きによってタイヤを上手に接地させることで発生させるグリップのこと。

モディファイ

部分的な修正、あるいは変更の意味。空力パーツのアップデートなどに対して用いられる。

ライドハイト

車高のことだが、実質的には最低地上高、すなわち路面からマシン底面までの距離を表す。空力的なパフォーマンスやバランスに大きな影響を与える重要なセッティング要素だ。基本的には低く設定した方が性能は高めやすく、前後別々の数値を設する(リヤの方が高い)のが一般的。

リザーブドライバー

レギュラードライバーが怪我や病気などの理由で出走できなくなった際、代わりに出走するドライバーのこと。

リタイア

トラブルやアクシデントなどによって走行を続けることができず、レースをあきらめること。

リフト&コースト

燃料消費を抑えるためスロットルを閉じ、惰性で走行すること。2017年~2018年のF1はレース中に消費する燃料が105㎏に制限されていた。この範囲内で約305㎞のレース距離を走り切るため、ラップタイムへの影響が小さいストレートエンドなどでスロットルをオフにし、惰性で走る。基本的には自動制御で行うため、ドライバーはアクセルペダルを踏み込んだままだ。なお、2019年からは決勝レース中の燃料使用量が110kgに増加されている

レコードライン

サーキットを速く走るための、理想的な走行ライン。他車と争っている場合は別だが、単独走行の場合は全車ほぼ同じラインを走るため、レコードラインにタイヤのコンパウンドゴムが付着し、このラインをトレースするとさらに速く走れるようになる。逆に、レコードライン以外の場所はタイヤかすが散らばっているため、ここを走るとタイムを落とす原因になる。

レコノサンスラップ

レーススタート前にピットからスターティンググリッドに向かう周回のこと。レコノサンス(reconnaissance)は本来、『偵察』『調査』の意味。フォーメイションラップ開始30分前になるとピットロード出口がオープンになり、各車両はグリッドに向かうことができる。コースの状況を偵察したり、車両のセットアップが合っているかどうか調査したりするわけだ。周回を終えた際、ピットレーンを通過すれば複数周回が可能。レコノサンスラップは、ピットロード出口が閉まるフォーメイションラップ開始15分前まで行うことができる。

ロリポップ

本来は棒付きキャンディの意味だが、ピットストップの際、車両の正面に差し出される札の形が似ていることからそう呼ばれる。車両が所定の位置に停止した際は『ブレーキ』と書いてある面を差し出し、タイヤ交換が終わりそうになるとロリポップを裏返して『1速』と書いた面を出してドライバーに発進の準備を促す。ピットストップ作業時間の短縮化が進むにつれロリポップの役割は信号システムに置き換わり、現在では後者が主流。

ロングラン

決勝レースを見据え、フリー走行で連続して長い距離(周回数)を走ること。連続して長い距離を走ることで、タイヤの性能劣化や、燃料消費によって軽くなる車重によるハンドリングへの影響などを調べ、タイヤ選択やセットアップに活かす。

ワークス

自動車メーカーが主体となって参戦するチームのことで、自社製のパワーユニットと自社製のシャシーを組み合わせた車両で参戦する。プライベーターの対義語。

107%ルール

ポールポジションのタイムから107%以内のラップタイムを記録できないと、決勝レースに進出できないとするルール。1996年に導入され、2002年末で一旦廃止。11年に復活した。あまりにも遅い車両は危険という判断からの導入。しかし現状では107%以内のタイムを記録できなかった場合でも、フリー走行のタイムから出走が認められる場合がある。

3ワイド

3台の車両が横並びになって競い合っている状態。2台が横並びになるのは珍しくないが、3台が並ぶのは稀だ。4台横並びになれば4ワイドである。

DNS

『Did Not Start』の略。リザルトに使われる用語で、レースにスタートできなかったことを表す。

DNF

『Did Not Finish』の略。リザルトに使われる用語で、レースにフィニッシュできなかったことを表す。

ES

『Energy Store』の略で、エネルギー貯蔵装置のこと。実質的にリチウムイオンバッテリー。重量は20~25㎏の範囲に収めなければならず、サバイバルセルの内部(燃料タンクの下に配置されている)に収める。

G

『Gravity』の略で重力加速度を表す単位。F1では主に加速時や減速時に前後方向に作用する加速度や、コーナリング時に横方向に働く加速度を表現する。いずれも、乗用車が発生する数値より格段に大きい。

HFDP

ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(Honda Formula Dream Project)のことで、若手ドライバーの発掘・ステップアップを目的としている。近年はF1ドライバー輩出に向けた取り組みを強化している。

SC

『Safety Car』の略でセーフティカーである。アクシデントなどによってレース続行が危険と判断された場合に導入され、走行車両を先導する。また、ウエット路面の際はセーフティカーの先導によりレースを開始する場合がある。1996年以降はメルセデスがセーフティカーを提供しており、2018年からはAMG GT Rがその役割を務める。

VSC

『Virtual Safety Car』の略でバーチャル・セーフティカーのこと。2015年に導入されたシステムで、セーフティカーを導入するほどではないコース状況の際に発令され、走行車両を強制的に減速させる。VSCが発動すると、各車は制限されたラップタイムの範囲で周回しなければならない。またその発動中はタイヤ交換目的以外でピットに入ってはならない。

車検不合格

全車ともフリー走行が行われる日の10時から16時までの間に車検を受けなければならず、フリー走行、予選、決勝後にはそれぞれ無作為に選ばれたマシンに対してボディワーク寸法や剛性、燃料、車重などの検査が行われる。

ここで違反が発見されれば車検不合格となり、失格扱いで正式結果からは除外されることになる。チームには抗議の権利があるが、裁定が覆ることは少ない。なお車検は全車に対して全項目を調べるわけではないが、ランダムチェックを課すことで全車が規定を守っているという前提に立っている。

車検無視

FIAはフリー走行や予選・決勝の終了後だけでなく、予選Q1やQ2セッション中に車検場のあるピットレーン入口でランダムにマシンを止めて車重計測を行っている(Q1とQ2で脱落したマシンはすぐにパルクフェルメに入らないため)。専用のシグナルで指示されたドライバーは速やかに減速して計測台上にマシンを止めなければならない。

ドライバーの見落としなどでこれを無視したかたちになった場合、罰則についてはスチュワードに委ねられているため明確な基準はないが、グリッド降格や失格などの重い罰則が待っている(※2019年F1第19戦アメリカGPのフリー走行2回目では、レーシングポイントのセルジオ・ペレスがFIAの車両重量測定の要求に応じなかったため、ピットレーンスタートのペナルティが科されている)。すぐに気付いてメカニックがマシンを車検場まで押していって計測した場合は容認されることもある。

ピットレーン速度違反

ピットレーンは80km/h(一部は60km/h)の速度制限が設けられており、ピット入口と出口の速度計でだけでなく、一定間隔ごとに設置されたセンサー間の通過時間から平均速度を割り出されて監視されている。

各車ともピットリミッターを押すことで自動的にその速度になるが、ピット入口や出口で攻めすぎるとオーバーしてしまうこともある。違反した場合は1km/hにつき100ユーロの罰金が科されるが、決勝の場合はその度合いによってタイム加算ペナルティやドライブスルーペナルティが科されることになる。

ジャンプスタート(フライング)

各グリッドに埋め込まれたセンサーで各車の動作が自動的に検知される。ただし2017年オーストリアGPで問題になったように、ギヤを1速に入れるなどでマシンが微妙に動いてしまうことに対応するため、ある程度の動きまでは誤差として認識されており、実際には0.2秒弱は早く動き出してもジャンプスタートと判断されない。

しかしシグナル消灯のタイミングはコンピュータによってランダム制御されているため、スタートのタイミングを予測することは不可能。ジャンプスタートを犯した場合はドライブスルーペナルティなど勝負権を失ってしまうほど重い罰則が待っている。

ドライビング違反

故意に事故を引き起こすような危険なドライビングは違反行為とみなされる。インターナショナルスポーティングコードで規定され、具体的には接触、コースアウトを強いるもの、不当な追い越し妨害がこれに当たる。違反した場合はタイム加算、ドライブスルー、ストップ&ゴー、戒告、失格などあらゆるペナルティが対象となる。

ひとつのガイドラインとして、バトルの際に2回以上ラインを変更することは許されていない。しかし今年からバトル奨励の意味からブレーキング時のライン変更などは大きな事故につながらない限り、厳しくペナルティを科さないことになった。

パルクフェルメルール違反

土曜の予選後はマシンのセッティングを変更することが許されておらず、予選と同じ状態で決勝に臨むことができないマシンはピットレーンスタートが義務づけられる。ただしパーツの整備や交換は認められており、FIAに申請して行うことが可能。だが同じスペックのパーツがなかった場合は、古い仕様への交換でもパルクフェルメ規定違反となってしまう。

パワーユニット基数制限超え

パワーユニットは主要6コンポーネント:ICE(エンジン)、TC(ターボチャージャー)、MGU-H(熱エネルギー回生システム)、MGU-K(運動エネルギー回生システム)、ES(エネルギー貯蔵装置)、CE(制御ユニット)が各ドライバー年間で規定の基数までしか使うことが許されていない。この制限を超えた場合、コンポーネントごとに5グリッド降格ペナルティが科される。20年はICE、TC、MGU-H、MGU-Kがが年間3基、ES、CE、年間2基までに制限されている。

規定数を上回る最初のパーツ投入時には10グリッド降格、それ以降は5グリッド降格が加算される。計15グリッド降格以上のペナルティとなる場合は、グリッド最後尾スタートとなる。

なお、1グランプリ週末に投入できるコンポーネント数に制限はないが、その週末の最後に使用したもの以外は翌戦以降の使用は禁止(2017年より)。これによってペナルティ消化による『ストック』の蓄積は制限されている。

ギヤボックス交換

ギヤボックスは6戦連続使用が義務づけられており、これに違反した場合は5グリッド降格ペナルティが科される。ただし対象となるのは予選・決勝のみで、金曜フリー走行には専用のギヤボックスを使用することができる。また前戦でリタイアした場合は次戦に新品を投入することが可能。ギヤボックス内のギヤやドッグリングなど、内部パーツに損傷があった場合、FIAが承認すればそれ単位の交換はペナルティなしで可能。

サバイバルセル交換

サバイバルセルつまりモノコックの交換に規制はないが、予選後のパルクフェルメ管理下ではモノコック交換を行うと別の車体と見なされるためピットレーンスタートが義務づけられる。

FIA

フランス・パリに本拠地を置く 『FederationInternationale de’l Automobile』の略で、国際自動車連盟と訳されている。1904年発足の国際自動車クラブ協会から1947年に改組された。F1やWEC(世界耐久選手権)、WTCC(世界ツーリングカー選手権)、フォーミュラEなどのルールやレース進行を統括している。

FOA

『Formula One Administration』の略。1996年から2010年までF1の商業権を管理する組織として機能。11年からはFOWC(Formula One WorldChampionship Limited )が事業を引き継いだ。以後、紆余曲折があり、16年にチェイス・ケアリー率いるリバティ・メディアがFOAの統括組織であるFOG(Formula One Group)の買収を発表。17年1月にバーニー・エクレストンからその座を引き継ぎ、ケアリーが新CEOに就任した。エクレストンは名誉会長職に就いている。

FOG

『Formula One Group』の略。F1世界選手権のプロモーションと商業権を管理する会社。FOAやFOWCなど、F1関連企業の統括団体。

FOM

『Formula One Management』の略。1987年にF1関連コンテンツのプロモーションやテレビ放映権を管理する企業として、FOPA(Formula OnePromotions and Administration)を引き継ぐかたちで誕生。グランプリ開催カレンダーの調整なども行う。

F1コミッション(F1委員会)

テクニカルおよびスポーティング・ワーキンググループから提案されたレギュレーション変更案を承認する組織。参戦チームと一部のサーキットプロモーター、商業権利者、FIAで構成される。承認した案はFIAの世界モータースポーツ評議会(WMSC)に提出され、最終的な決議が行われる。

GPDA

『Grand Prix Drivers’Association』の略。1961年に設立された、F1ドライバーの権利保護を目的とした団体。1980年代から90年代にかけて活動を停止するが、94年にドライバーの死亡や負傷が相次いだことから活動を再開した。

コンコルド協定

FIAとFOG、F1チームの三者間で締結されている、F1世界選手権の運営や権利に関する決めごと。レギュレーション変更の手順から収益分配の方法まで、さまざまな取り決めが詳細に定められている。その内容が一般に公開されることはない。現在の協定は2013年9月に成立し、20年まで有効とされている。コンコルド協定の名称は、1981年にこの協定が成立した時、FIA(当時はFISA)の本部がパリのコンコルド広場に面していたから。

F1ストラテジーグループ

将来的なレギュレーション変更を検討するグループで、2013年に誕生。FIAと商業権管理者(FOG)、参戦チームにそれぞれ6議席が与えられ、これらにパワーユニットサプライヤー1社と6つのイベントプロモーターが加わる。6つあるチームのうち、5つはレッドブル、マクラーレン、フェラーリ、メルセデス、ウイリアムズで固定。残り1枠はこれら5チームを除いたチームのうち、前年のランキング最上位に与えられる。F1ストラテジーグループで承認されたレギュレーション変更案はF1コミッションに送られ、ここで承認を受けた後、最終的には世界モータースポーツ評議会で決議される。

世界モータースポーツ評議会

FIAの組織。『World Motor Sport Council』の原語を略し、WMSCとも呼ばれる。年に3~4回開催され、F1ストラテジーグループ?F1コミッションを経て承認されたレギュレーション変更案を最終的に採択する。FIA会長のジャン・トッドや各国自動車クラブの代表(日本の場合はJAF:日本自動車連盟)、F1商業権管理者などで構成される。

スチュワード

レース競技委員。走行プログラム中に発生した出来事に対し、あらゆる決定を行う。ドライバーに対するペナルティを協議するのもスチュワード。3名のスチュワードのうち、1名は開催国から選出。ドライバーの視点を含めて審議できるよう、2010年から元F1ドライバーを1名加えて対応している。

マーシャル

コース係員。コースサイドに設けられた各ポストに待機し、スチュワードからの指示を受けて各種フラッグを掲示したり、コース上で走行不能に陥った車両の撤去やコースの清掃を行ったりする。

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