1990年代にスポーツカーレースのGTクラスで大活躍したダッジ・バイパー。今季、SRTバイパーGTS-Rとしてアメリカン・ル・マン・シリーズ第6戦ミドオハイオで復帰することとなったが、そのバイパーの開発を務めてきたドミニク・ファーンバッハーに、デビュー戦を終えての感想を聞いた。
90年代のル・マン24時間をはじめ、スポーツカー耐久レースで大活躍をみせてきたバイパー。今季、クライスラーのハイパフォーマンス部門であるSRTから、ル・マンのGTEクラス向けに再びバイパーGTS-Rが開発されることになり、ALMS第6戦ミドオハイオでデビューを飾った。
そんなバイパーの開発を務めてきたのが、過去にスーパーGT300クラスにも参戦した実績をもつファーンバッハー。バイパーによるニュルブルクリンクのタイムアタックを担うなど、SRTからの信頼も厚い。GTE仕様バイパーのデビュー戦でも、そのステアリングを任された。そんなファーンバッハーに、デビュー戦を終えた感想を聞いた。
──テスト参戦のレースデビューを終えたばかりですが、率直な感想は?
ドミニク・ファーンバッハー(以下DF):正直、すごく満足してるよ。テスト車両の初めてのレースと言う事もあり、ポジションは関係なくてとにかく完走することだけが目標だったんだ。わずか6カ月前に始まったSRTバイパーGTS-Rプロジェクトで、まさかこんなに早くテストレースデビューが叶うとは思ってもなかったよ。昼夜問わず準備をしてくれたチームのおかげだ。
──初戦という事で、レース前は緊張しましたか?
DF:緊張はスタートのほんの少し前だけだね。それよりも、この瞬間が訪れた喜びの方が何倍も勝ってたよ。
──長年あなたはALMSに参戦していますが、アメリカのレースがあなたを魅了するものとは一体なんなのでしょうか?
DF:ALMSにはフランクなアメリカンフィーリングと、徹底したプロフェッショナリズムのギャップの差があって、それを楽しんでるんだ。毎戦とても多くの観客が応援しに来てくれて、その盛り上がりは相当なものだ。雰囲気が非常に素晴らしいと思うね。世界中、色々なレースに参戦しているけれど、ALMSの雰囲気は一種独特だ。2008年にシーズン2位で終えたのが過去最高位なので、それ以上……つまり優勝することを目標にしてるよ。
──レースを見ている印象では、ALMSはとてもアクションの多い、ハードなレースというイメージがありますが、実際ドライバーとしてはどうでしょうか? ヨーロッパ、アメリカ、そして日本と渡り歩いているドミニク個人の感想は?
DF:これは一言じゃ難しいね。アメリカのレースでは、どちらかというと落ち着いた感じのドライビングスタイルだと感じるね。 ALMSはレース時間が長いので、ポイントを得るために慎重に走っているように思うよ。ヨーロッパはそれに比べてすごくハード。みんな最初からガチンコ勝負で来るね。日本でもDTM並のアクションを見るけど、一定の基準があるよね。僕はコース上でも他のドライバーからは“ガイジン”としてちょっと他人行儀にされていた感じも受けたしね(笑)。悪い意味じゃないよ。日本人は損をしているかな。とっても速くて素晴らしいドライバーがいるのに、日本だけで走っているのはもったいない気もする。ヨーロッパやアメリカへ出て、どんどん日本の強さをアピールして欲しいし、日本以外の国でもライバルとして一緒に戦ってみたい。
──デビュー戦を終えて、今後の課題は?
DF:まだ開発開始から6カ月。細々としたことから風洞テストまで色々なことを試行錯誤している状態で、課題は満載だよ。デビューレースで走ったエンジンは、実はまだほとんどノーマルのままなんだよ。リストリクターの関係もあり、ストレートは明らかに遅かったね。市販車からの性能の可能性を探るという意味でも、今後のテストはマシンを完成させるために、小さな問題から片付けていく予定だ。
──開発はとても難しかったとメディアで報道されていますが、一番難しかった段階は何ですか?
DF:一番難しいことはこれからだと思うね。残りのシーズンすべて走る予定だから、それぞれのレースの後にデータを細かく分析し、改良する部分を検討したり……。エンジンのパワーアップ、足回りやシャーシの状態は最も神経を使う。なるべく長い距離をこのシーズンで走り、どこが壊れやすいかということも十分にテストして、来年の本参戦用に改良を重ねる予定だ。
──BMWがALMS用のマシンをM3 GTからZ4 GT3ベースで開発する案を示唆していますね。世界中のレースがGT3へと流れつつある中、バイパーはGTEベースなのでしょうか?
DF:バイパーはGTEベースのみで、GT3ベースの車両を作る事は考えてないよ。しかし、アメリカでもGT3ベースのグランダム車両が増えているから、アメリカにもGT3の波は来るかもしれないよね。