2026年のWEC世界耐久選手権第1戦『イモラ6時間レース』は、トヨタ・レーシングの8号車トヨタTR010ハイブリッドの優勝で幕を閉じた。ここでは、抜きにくいコース特性の影響もあり、いたるところで接近戦が見られた開幕ラウンドを戦い終えたドライバーや関係者のコメントを通じ、今回のレースを振り返っていく。

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 日曜日のイモラ6時間レースでのトヨタの勝利は、日本メーカーにとってWEC通算100戦目での50勝到達であっただけでなく、最多勝記録保持者のセバスチャン・ブエミが5つのトヨタ・プロトタイプモデルすべてで合計27回の勝利を挙げたことも意味している。

 一方、チームメイトのブレンドン・ハートレーにとっては24回目の勝利となり、トヨタ7号車のマイク・コンウェイを抜いて歴代勝利数リストで単独2位に躍り出た。このニュージーランド人ドライバーは、トヨタで12勝、以前の所属先であるポルシェで12勝を挙げたことになる。

 8号車トヨタのクルーにとっては2024年のバーレーン以来の勝利であり、イタリアでの初勝利でもあった。

 トヨタ・レーシングのテクニカル・ディレクターであるデビッド・フローリーは、7号車を最後にドライブした小林可夢偉を古いタイヤのままフィニッシュまで走らせ続けることも検討したが、最終的には「あまりにリスクが高い」と判断したことを認めた。最後のピットストップでタイヤを交換するという決断により、可夢偉、ニック・デ・フリース、コンウェイがシェアするマシンは3番手へと後退した。

 フローリーは次のように説明している。「(可夢偉は)コクピットからその案をプッシュしてきたが、安全な選択肢ではなかった。仮にこれがチャンピオンシップの最終戦で、タイトル獲得か喪失かが懸かっているのであれば検討したかもしれないが、我々はより大きな視点で捉え利益に対するリスクを評価した」

【順位結果】2026年WEC第1戦イモラ 決勝
51号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)を抑え込む7号車トヨタTR010ハイブリッド(トヨタ・レーシング)

 フェラーリのトラック・オペレーション責任者であるジュリアーノ・サルヴィは、地元イタリアでの敗北に「大きな失望」を表明したが、トヨタが勝利のカギとなったオープニングでのタイヤ3スティント連続使用というギャンブルに打って出たことは正しい選択だったと述べた。

 サルヴィはレース後、記者団に次のように語った。「我々が持っていたデータから判断すると、(3スティント連続走行は)不可能だと考えていた。もし、集団後ろにいるなら、(リーダーと)逆のことをしてヒーローになるか、あるいは愚か者になるかのどちらかだ。それは非常に微妙な線引きだ。ある種のギャンブルではあったが、相手側から見れば正しい選択だった」

 サルヴィは、イモラではフェラーリの方が全体的に速いマシンだったというフローリーの主張に異議を唱え、新たにアップグレードされたTR010の優れたタイヤマネジメントと燃料マネジメントを挙げた。

「全体として、現時点でトヨタがリードしているマシンであることは疑いようがない」と彼は述べた。「フリー走行での分析でもそれは見て取れた。当初から、トヨタは非常に手強い競争相手になると考えていた」

 終盤の2番手争いで7号車トヨタがトラック上のポジションを上げたことが最終結果に影響したか問われると、サルヴィは次のように答えた。「あれは何も変えなかった。(8号車トヨタと51号車フェラーリが)もっと僅差になった可能性はあるが、彼らには我々を寄せ付けないだけの余裕があったと思う」

■トラックポジションを失いすぎた

 プジョー・トタルエナジーズのチーム代表であるエマニュエル・エスノーは、予選4番手から、マルテ・ヤコブセン/ロイック・デュバル/テオ・プルシェール組の94号車プジョー9X8が12位まで順位を落としたことを「非常に残念だ」と述べた。

「残念ながら、レースでのペースと戦略を最適化することができなかった。最初のピットストップでは、6番手で入って10番手で出たと思う。競合他社が給油時間を短くしたためだろう。そのため、いくつか順位を落としてしまった」とエスノー。「期待していたレベルのペースを得るのが難しかった。バランスはかなり快適だったものの、特定されたいくつかの制限要因がある。我々は現在も改善に取り組んでいる」

 アルピーヌのドライバー、シャルル・ミレッシは、フェルディナント・ハプスブルク、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタとともに35号車アルピーヌA424で獲得した4位は、彼らが達成できた最大限の結果だと信じている。ミレッシは予選7番手だったが、50号車フェラーリ499Pと12号車キャデラックVシリーズ.Rがドライブスルー・ペナルティを受けたことで労せず順位を上げた。

35号車アルピーヌA424(アルピーヌ・エンデュランス・チーム) 2026年WEC開幕戦イモラ

 ミレッシは、アップデートされたA424は「良い前進」だったが、依然としてイモラの縁石には苦戦したとSportscar365に語った。「これ以上の結果を出すのは難しかったと思う。(ピットストップの)タイミング次第ではレースを通じて10秒ほど稼げたかもしれないが、トップ3はかなり前方だった」

 ミレッシはまた、バーチャル・セーフティカー(VSC)中に4本すべてのタイヤを交換したことはチームの戦略的ミスだったと感じている。「トラックポジションを失いすぎたので、2本だけの交換のほうが良かったと思う」

 BMW Mモータースポーツの責任者アンドレアス・ルースは、レネ・ラストとロビン・フラインスがドライブした20号車BMW MハイブリッドV8(BMW MチームWRT)が、VSC中の速度超過による2時間目のドライブスルー・ペナルティで最後尾まで転落した後、5番手まで挽回し4位を巡る5台の激しいバトルに加わったことを称賛した。

「我々はつねに表彰台を目指している」とルースは述べた。「今日、我々は表彰台争いには加われなかった。とくに20号車はドライブスルーペナルティを受け一時は最後尾に沈んでしまったため、完全に完璧なレースとは言えなかった。戦略的に不利な立場に置かれたが、最終的にあのマシンで5位、もう一台のマシンで7位になれたのは良い結果だと思う」

■ピットでのタイムロスが響いたコルベット

 フィル・ハンソンは、サテライトのAFコルセ・フェラーリ499Pで採用された戦略に「不満」を感じていた。この戦略により、チームメイトのロバート・クビサはミディアムタイヤで105周を走ることになり、最終的に83号車は10位でフィニッシュした。「常に正しい決断ができるわけではない。将来より良い決断を下せるよう、適切な手順を整えることが重要だ」と彼は語った。

 このイギリス人ドライバーは、フェラーリが、トヨタのタイヤを長持ちさせる能力には及ばなかったと付け加えた。「彼らの驚異的な強みは一貫性だ。タイヤを3スティント持たせながらも力強さを維持できる能力だ。今週末の我々のマシンの走らせ方では、それは不可能だった。僕たちが速くなかったと言っているのではない。僕たちは非常に速く、フェラーリはおそらく最速のマシンだったが、トヨタが3スティントにわたって一貫性を保ち続ければ、彼らを倒すのは非常に難しくなるだろう」

 007号車アストンマーティン・ヴァルキリーのドライバー、ハリー・ティンクネルは、縁石のせいでハート・オブ・レーシング・チームにとっては依然として「ひどいトラック」であったものの、1年前にイモラを訪れて以来、イギリスのメーカーが遂げた進歩に満足している様子だった。「昨年の今頃とは雲泥の差だ。他のいくつかのトラックに行けば、もっと楽しめるようになることを願っている」と語ったティンクネルは、トム・ギャンブルとともに007号車アストンマーティンで9位入賞を果たした。

69号車BMW M4 LMGT3(チームWRT)と「フェラ33号車シボレー・コルベットZ06 LMGT3.R(TFスポーツ)
10号車マクラーレンが戦線離脱する以前から接近戦を繰り広げていた69号車BMWと33号車コルベット 2026年WEC開幕戦イモラ

 ニッキー・キャツバーグは、LMGT3の優勝争いで69号車BMW M4 GT3エボ(チームWRT)にわずか0.265秒差で敗れたあと、TFスポーツの33号車シボレー・コルベットZ06 GT3.Rは「今日勝つべきクルマだった」と述べた。

 2シーズンぶりにWECに復帰したキャツバーグはSportscar365に対し次のように語った。「もちろん、10号車マクラーレン720S GT3エボ(ガレージ59)にトラブルがあったことで運に恵まれた部分もあったが、それは最後の2回のピットストップで非常に不運に見舞われた後のことだった。僕たちはプッシュバックをしなければならず、クルマを上げ直さなければならなかったため、膨大な時間を失った」

 最終盤に見られたBMWのダン・ハーパーとの接戦について、キャツバーグはこう付け加えた。「彼は1周早く勝利を確信し始めたように感じた。だから、僕ははさらに激しくプッシュし、彼にパッシングを繰り返した。このようにWECに戻ってこられて本当に楽しかったよ」

■エアコンなしで戦ったサージェント

 序盤に上位争いに加わっていた他のLMGT3マシンの1台は、88号車フォード・マスタングGT3エボ(プロトン・コンペティション)だった。このクルマは9番手からスタートしたが、ステファノ・ガットゥーゾが2スティント目でトップ争いに加わった。最終的には元F1ドライバーのローガン・サージェントにとって厳しい最終スティントとなり8位で終わったものの、ガットゥーゾは手応えを感じているようだ。

「今は今年の残りのシーズンに向けて非常に自信を感じている」とガットゥーゾ。「最終スティントでは、ローガンはエアコンが効かなくなっていたため、運転するには非常に困難だった。我々のクルマはエンジンがフロントにあるため、車内は非常に高温になる。厳しい状況にもかかわらず、彼は素晴らしい仕事をしてくれた」

 序盤のLMGT3の首位争いには、アコーディスASPチームのレクサスRC F GT3の2台も加わっていたが、1時間が経過したところでチームにダブルトラブルが降りかかった。78号車は最初のピットストップ中にスターターの不具合が発生し、再始動に多大な作業を要した。一方、姉妹車の87号車はその直後にコース上で停止してしまった。

 トヨタ育成出身のエステバン・マッソンは、レース後半に78号車レクサスをコースに戻し、23周遅れでフィニッシュした。彼は次のように語った。「チームは、できる限り迅速に驚くほど速くマシンを修理するという驚異的な仕事をした。結局のところ、これはモータースポーツだ。時にはこういうこともあり、すべてをコントロールできるわけではない。最初のピットストップの後、エンジンをかけることができなかった。スターターが作動しなかったんだ。何が起きたのか正確に知るために、もう少し詳細を把握する必要がある」

ローガン・サージェントもドライブした88号車フォード・マスタングLMGT3(プロトン・コンペティション) 2026年WEC開幕戦イモラ

 レース後半に苦境に立たされたもう一台のマシンは、LMGT3の中団を堅実に走っていた61号車メルセデスAMG GT3エボ(アイアン・リンクス)だ。「パワーに関連する技術的な問題を感じ、パワーを失い続けていた」とマキシム・マルタンは説明した。「状況は悪化する一方で、他の問題も出始めたためリタイアすることを選択した」

 マルタンはメルセデスAMGが先頭で戦えるとは感じていなかったが、トラブルがなければまずまずの結果を期待していたという。「中団には留まれたと思う。フロントで戦ったり勝ったりするスピードはなかったが、問題がなければ良いポイントを獲得できていたはずだ」と彼は付け加えた。「我々はポルシェと一緒に走っていたが、彼らは3位と4位でフィニッシュした。だから我々も多かれ少なかれそのあたりにいたはずだ」

 公式発表によると、前年とは異なりイースター(復活祭)の週末に被らなかった2026年のWEC開幕戦イモラには、延べ9万2175人の観客が訪れた。これは事前の予想どおり2024年に記録されたこれまでのレコードである7万3600人を大幅に塗り替えるものとなっている。WECの次戦となる第2戦は、ベルギーのスパ・フランコルシャンで5月7~9日に開催される。決勝日は土曜となるのでお間違いなく。

2026年のWECイモラには過去最多となる9万2175人が来場した

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