アウディAGは29日、今季のル・マン24時間とWEC世界耐久選手権に挑戦する新型LMP1プロトタイプカー、『アウディR18 e-tronクワトロ』をミュンヘンで世界初公開した。
2011年のル・マン24時間ではR18 TDIを投入し、プジョー陣営を相手に勝利を飾ったル・マンの王者アウディ。R18からクローズドボディのプロトタイプカーとなり、今季は新たにハイブリッドシステムを搭載してきたトヨタを相手に、ル・マンのタイトル防衛と、“ハイブリッド対決”に挑むことになる。
そんなアウディは、すでに今季のWEC第2戦スパからハイブリッドのLMP1マシンを投入することを明らかにしていたが、29日、ミュンヘンでワールドプレミアされたアウディのハイブリッドプロトは、『R18 R18 e-tronクワトロ』という名称を与えられた。
このR18 e-tronクワトロは、アウディが誇るふたつの市販向けドライブテクノロジーを結びつけたものとされており、アウディが1980年代からパワーを確実に路面に伝えるために開発してきた四駆システムの“クワトロ”と、アウディが市販に向け開発を進めている電気自動車システムの“e-tron”の可能性を組み合わせた次世代四駆だという。
システムとしては、TDIディーゼルターボエンジンからの駆動は従来どおりリヤに、ブレーキング時に回生されたエネルギーを使った電気モーターからの駆動は、フロントの車軸に与えられるという。ミュンヘンでの発表会では、アウディ・モータースポーツのヴォルフガング・ウルリッヒ代表自らR18 e-tronクワトロをドライブし、電気モーターで走行した。
「アウディは常に市販車と関係があり、カスタマーに対して技術的に関連があるレースと選手権を選んできた。クワトロ、TFSI、TDIといったテクノロジーは、いかに市販車の技術をレースが推進してきたかという好例だ。e-tronクワトロでもその流れは明らかで、それが市販車に導入される前に、我々はトラックでテストを行う」とウルリッヒ代表は語る。
アウディではR18 e-tronクワトロと同時に、昨年型のR18 TDIを改良した『R18ウルトラ』を投入。ル・マン24時間では、2台のR18 e-tronクワトロと2台のR18ウルトラで参戦する。
この2タイプの違いは、外見上からはカラーリングとフロントのフェンダー等一部しかないが、2種類のマシンは“双子の兄弟”であり、R18ウルトラの“ウルトラライト・テクノロジー”の開発なしにはR18 e-tronクワトロは誕生し得なかったという。
「アウディが発明したTDIエンジンは、いまだ世界で最も効率的なドライブトレーンのひとつだ。我々はTDIにまだまだ可能性があると思っている。だから今季、アウディはふた通りの挑戦を選んだのだ」とウルリッヒ代表はR18ウルトラ開発の理由を語った。