24日、フランスのポール・リカールでお披露目されたトヨタのLMP1スポーツプロトタイプカー、『TS030ハイブリッド』。木下美明チーム代表は、初年度の目標を「THS-Rパワートレインを主としたTS030ハイブリッドの性能レベルを見せること」としている。
このトヨタTS030ハイブリッドは、TMG(トヨタ・モータースポーツGmbH)が製作したシャシーに、これまでル・マンでレベリオン・レーシングが使用していたRV8K-LMエンジンとは異なる、新設計の3.4リッターV8エンジンを搭載。日清紡ホールディングスと開発したキャパシタ(蓄電器)を備えるハイブリッド・システムを採用している。
チームのテクニカルディレクターを務めるパスカル・バセロンによれば、こもマシンの特徴は空力とハイブリッドシステムで、ブレーキング時に発生するエネルギーを回生し、コーナー出口のスピードを上げ、さらに燃費面でも向上に繋げることができるという。
1月11日から行われたシェイクダウンテストでは、夜間走行を含み数百キロを走破。アイシンAW製フロントモーターシステムとデンソー製リヤモーターシステムを駆動させ、高い信頼性を誇ったとしている。
木下チーム代表は、このTS030ハイブリッドについて、「もちろん、ル・マンでは優勝したいと思っている。優勝は、このレースに出場する誰もの夢だと思う」と語るものの、今年の目標はまずマシンのポテンシャルをみせることだと言う。
「非常に強いライバルを相手に戦えるようになるには学び、成長しなければならないと現実的に考えており、今年の我々の目標は、THS-Rパワートレインを主としたTS030ハイブリッドの性能レベルを見せることだ」
「ハイブリッドはトヨタのコア技術であり、モータースポーツの舞台でこれを見せることは重要であり、ラップタイムと燃料効率の両方でパフォーマンスのアドバンテージを発揮できることを証明したいと思う。ここまでたどり着くことができたのは、TMGと日本のモータースポーツ部で設計、開発、TS030ハイブリッドの準備に関わった全員の努力のおかげだ。またサーキットに戻れることになり、全員がとても興奮している」
また、ハイブリッドプロジェクトの村田久武リーダーは、「トヨタのモータースポーツ用ハイブリッド・システムは、開発に取り組んで来たこの数年間で大きく進歩した。ル・マン24時間というモータースポーツにおける究極の試練の場に、この技術を持ち込む準備ができたと感じている」と自信をみせる。
「ハイブリッド・システムを採用するということは、標準的な動力源と比べればもちろん、異なるチャレンジ。しかし、デンソー、アイシンAW、日清紡ホールディングスといったパートナーと共同で開発に取り組んで来たTHS-R技術も、TS030ハイブリッドの総合コンセプトの一部。この技術を用いてブレーキングゾーンの間で最高500kJのエネルギー回生及び保存を行い、フロントまたはリヤのモーターを通してこのエネルギーを放出することによって、クルマの加速性能向上に繋げることができる」と村田リーダー。
6月のル・マン24時間では、2台がデビューする予定のトヨタTS030ハイブリッド。ル・マンでは王者アウディが待ち構える。ガソリンハイブリッドがアウディに対しどういったポテンシャルをみせるのか今から楽しみなところだ。