30日、富士スピードウェイで行われたフォーミュラ・ニッポンのルーキーオーディションで午前、午後ともトップタイムをマークした山本尚貴は、タイムを「評価していただくひとつの要素になるとは思います。4位で終わるよりはトップで終わる方がいいと思いますし」としつつ、謙虚にトップカテゴリー昇格を狙う姿勢を示した。
今季の全日本F3で、後半戦にNクラスで圧倒的な強さを見せた山本は、今回チャンピオンを獲得してホンダ、リアル・レーシングの金石勝智代表らと相談の末、フォーミュラ・ニッポンのオーディションを受けたという。
「今年は塚越(広大)さんがHFDPでFニッポンを戦って、GTではKEIHIN NSXのチームのお手伝いをさせていただいたんですが、そうして身近で華やかなトップカテゴリーを見て、ここで勝ちたい、速く走りたいという思いがあったんです。そこでルーキーオーディションをお願いして、チャンスをいただきました」と山本。
昨年もフォーミュラ・ニッポンのルーキーテストを受けた山本だが、その時はウエットコンディションのスポーツランドSUGOで開始からすぐにクラッシュ。マシンを壊してしまい涙にくれた。
「実際、去年チャンスをいただいた時には10分程度で、自分のミスで終わらせてしまって……。正直(去年のFN06の印象は)あんまり覚えていないんです。当たったことの印象が強すぎて(苦笑)」と反省を糧にコースインしたこの日の山本は、コースサイドで見ていても驚くほどのスローペースでコースイン。慎重にペースを上げていった。
「今回は2回目だけど、初心を忘れずに、初めてのクルマなので慎重に乗ることを心がけました。1日ずっと雨だったらちょっとずつペースを上げていかないといけなかったですけど、今日は午後晴れるという事は分かっていたので、まずは操作系を覚えることに集中しました」
山本はそれでも、午前中のセッション終盤にコースが乾いてくると、慣れ親しんだHFDP RACINGとともに絶妙のタイミングでスリックを装着。車高を下げ、他を大きく突き放し午前中の最速タイムをマーク。トップで午前のセッションを終えた。
続く午後のセッションは、チャンピオンチームであるNAKAJIMA RACINGのマシンをドライブ。しかし、開始すぐに最終コーナーでエンジンが停止してしまい、赤旗のきっかけとなってしまう。一瞬昨年の悪夢がよぎるが、「止まったときには、一瞬自分が何か壊しちゃったのかと思いましたけど(苦笑)、でもチームが的確に判断してくれてすぐコースに戻ることができた。すごく感謝しています」とその時の状況を語る。
NAKAJIMA RACINGの作業によりコースに復帰した山本は順調に周回を重ね、終盤のニュータイヤを装着してのアタック時にはまたもトップタイム。両セッションともにトップとなり、1日限りのルーキーオーディションを終えることとなった。
「トップタイムは評価していただくひとつの要素になるとは思います。4位で終わるよりはトップで終わる方がいいと思いますしね。でも、クルマも午前と午後で違いますし、それまでの過程もあるので、総合的な部分で評価して欲しいと思います」とこの日のセッションを振り返る山本。
「ただ、自分の中では2年間F3で学ばせていただいたので、それ以上の事は出そうと思わず、今の実力を出し切ることに集中しようと思いました。ですので、自分の中には達成感はあります。ここで評価していただいたら、次の目標に向けて頑張りたいと思います」とくまで謙虚。
「ホンダさんはじめ、(田中)弘さんと金石さんにチャンスをいただいて、まして2チームの人にクルマを動かしていただいたので、すごく感謝したいし、もしチャンスをもらえたら成績を残して恩返しできるよう頑張りたいです」と来季のフォーミュラ・ニッポン昇格に向け意欲を語った。
その走りを見守った関係者の中では、今回の山本の走行は一様に評価されつつも、まだまだ課題はあるという。REAL RACINGの金石代表は「無難にこなしたという意味では合格点ですね」とコメント。「ただ、いざレギュラードライバーとやり合った時に、本当にこういうタイムが出せるのか? というのはありますね。だから合格点と言ってもまだ第一段階。ただ、トップタイムというのは自信になりますからね。良かったと思います」とこの日の走りを評した。
また、午後の走行を担ったNAKAJIMA RACINGの田坂泰啓エンジニアは「ドライでベストを出したし良かったと思う。でも、大きいクルマを走らせるに当たっての課題は見つかって、自分のダメなところは発見できたと思う。(中山と)ふたりともに、評価されていいと思う」と山本の1日について語っている。