ここでピット出口のシグナルがグリーンのタイミングを狙って、素早くピットインしたのは、4番手を走行中だったアウディ7号車。22周を終えたところでレースが再開されてから、プジョー勢はルーティンのピットインを行ったが、セーフティカー中にピットインしたマージンを生かし、29周を終えたところで、アウディ7号車がトップに立つ。
ここからは、7号車が必死で逃げる展開となる。そして、アウディ7号車が2スティントを終え、2回目のルーティンピットを行なったのが、午後1時24分という時点。この頃には、スパだけでなく、アルデンヌ地方一体が停電に見舞われ、ピットビルもすべての照明とTVモニターが消灯している状況となっていた。
ちょうど、そんなタイミングでクラッシュを喫したのが、プジョーの2号車。周回遅れのマシンをオーバーテイクしようとした所で、縁石に乗った2号車はそのまま単独スピン。タイヤバリアにマシン前後をヒットし、リヤウィングが脱落した。しかし、何とか再スタートして、2号車はそのままピットへ。それと同時に、レースは赤旗によって中断される。コントロールタワーの電源がすべて落ち、セーフティカーとのコンタクトが取れなくなったためだ。この状態で競技を続行するのが危険だとの判断から、レースコントロールは中断を決めた。
この赤旗中断は30分余り続き、セーフティカーランによる再スタートが切られたのは、午後2時07分。
セーフティカーが隊列を離れると、午後2時15分には実質的な再スタートが切られた。赤旗前にマージンを持っていたのは、トップに立っていたアウディ7号車。しかし、それが帳消しになったため、プジョー3号車に追われる展開に。「レスダウンフォース仕様で直線が速いアウディを抜くのは、至難の業だった」と、セバスチャン・ブルデーは振り返ったが、このバトルは71周を消化した7号車が3回目のルーティンピットインを行なうまで、10周あまりに渡って続き、場内を沸かせた。
この頃になると、アウディとプジョーの作戦の差がハッキリしてくる。レスダウンフォース仕様のアウディはタイヤに厳しくなるため、各スティントでタイヤ交換。対するハイダウンフォース仕様のプジョーはWスティントを敢行した。この違いにより、レースが後半に入ると、プジョーの3号車が大きくリードを広げ、それにアウディ7号車が続いた。
しかし、レースの残り時間が1時間余りとなったところで、1台のGT2カーがブランシモンで大クラッシュ。再びコース上にセーフティカーが入ると、アウディ7号車は、再びピット出口がグリーンシグナルのタイミングを狙ってピットイン。序盤と同様に、ここでマージンを得る作戦に出た。また、このセーフティカー中に、プジョー1号車もピットイン。しかし、生憎ピット出口のシグナルは赤。その結果、1号車はタイムを大きくロスすることになった。
一方、121周を終えたところで、セーフティカーがピットに戻るのと同時に、最後の作業のためにピットに滑り込んだのは、プジョー2号車。その3周後には、トップを行く3号車もピットに入る。この頃、コース上には再び雨がパラつきはじめていたが、3号車は給油のみでコースに戻った。その直後、プジョー1号車は濡れた路面に足を取られてコースアウト。アウディ7号車もオーバーランする場面が見られた。そのため、残り時間が約25分となったところで、アウディは7号車をピットインさせて、タイヤをカットスリックに交換する。
その後、一時はトップを行く3号車のペースが雨の影響でガクッと落ち、7号車が差を詰めたが、雨が上がると再びペースが逆転。7号車は前を追うのではなく、後ろから迫るプジョー2号車を気にしなければならなくなった。しかし、明らかにペースが違い、7号車はなす術がなかった。
その結果、チェッカーまで残り約4分という136周目の最終コーナー手前で、プジョー2号車が7号車をオーバーテイク。結果、プジョーが1-2フィニッシュを飾り、アウディでは唯一7号車が表彰台を獲得する結果となっている。
以下、4位にはプジョー1号車、5位にはアウディ9号車。フォーメーションラップでクラッシュしたアウディ8号車は、レース中盤、ブノワ・トレルイエがドライブしている途中に、フロアが脱落するトラブルに見舞われたが、最初のクラッシュを除けば時折トップグループを上回るタイムで周回。最終的には12位まで挽回して、レースを終えている。
