撤退の理由に関してはふたつ考えられる。ひとつは、純粋に経済的な理由によるもの。現時点でも件のスキャンダルにより世界的に売り上げが下降しており、今後アメリカで膨大な制裁金が課せられたとしたら、プロモーションのためとはいえ大掛かりなモータースポーツ活動を続ける余裕はなくなる。
そしてもうひとつの理由は、失墜した環境イメージを回復するためだ。フォルクスワーゲンがWRCに参戦した大きな理由のひとつが、小排気量ターボエンジンの優位性をプロモートすること。その目的は、去年3年連続でダブルタイトルを獲得したことで、ある程度達成されたといえる。そして、現在フォルクスワーゲンはダーティなイメージがついてしまったエンジン技術よりも、プラグインハイブリッドなどEV技術をアピールするマーケティングにシフトしている。そのため、前出のチーム関係者は「WRCを止めたらフォーミュラEに参戦するのでは」と推測する。
あくまでも噂の域を脱するレベルの話ではないが、チーム関係者でさえ確信を持って「来年以降も参戦する」とは言えない状況のようだ。2017年のWRC開幕戦モンテカルロで、フォルクスワーゲンの新型WRカーが元気に走っていることを願うばかりだ。
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