■準備を重ねて速さをみせたCarGuyとEBI

 レース1で優勝を飾ったCarGuy Racingの場合は、少々2チームとは事情が異なる。チームは金曜の走行前に、急遽木村武史に代わって、横溝直輝がケイ・コッツォリーノのパートナーとなった。これによりクラスもプロ-アマからシルバーに変更されている。これは同時開催のランボルギーニ・スーパートロフェオに木村がダブルエントリーとなっており、体力の問題を考え変更したものであるが、結果的に周囲も「ちょっとズルい(笑)」とうらやむドライバーラインアップとなった。ふたりの速さが勝利に結びついたのはまずひとつの要因だろう。

 また、このふたりはコッツォリーノがスーパートロフェオやGT3等で、横溝がアジア各国のレースに参戦し、ピレリタイヤのことを良く知っているのも大きい。さらに今回のレースではランボルギーニのレース部門であるスクアドラ・コルセからエンジニアが派遣され、これも功を奏した。「バツグンにクルマが良かった」とはレース後のコッツォリーノのコメントだ。

 そして、CarGuy RacingはチームでウラカンGT3を2台、そしてスーパートロフェオを2台所有しており、“練習”として富士や鈴鹿を走り込んでいたのだ。この際にGT3で使っていたのは別銘柄のタイヤだが、「自分たちアマチュアもそうですし、プロも育つと思っていたので、それが良かったのではないでしょうか。お金はかかりましたけど、それと情熱があれば、僕たちのような駆け出しのチームでも勝てるのだと思います」と木村は代表という立場から、練習こそが結果に結びついたのだと語った。

 一方、初参戦ながら速さをみせたのは、山野直也/坂本祐也というコンビで参戦したPorsche Team EBIだ。ふたりともスーパーGT、ポルシェ、そして富士はまったく不安がないというほどの経験がある。そこでチームは、事前にピレリを購入しテストしたほか、山野と鈴木直哉エンジニアが鈴鹿戦を視察し、今回の参戦に備えていた。

 金曜のフリープラクティスが雨交じりになったことで、セットアップの時間が足りなかったというPorsche Team EBIだったが、5番手からスタートしたレース1では序盤総合3番手を走り、CarGuyとともに表彰台なるか……という展開をみせた。ただスポット参戦チーム1戦目に課せられるピットストップ時の7秒ペナルティにより、表彰台はならず。ポルシェが富士を得意とする性格だった部分はあるにしろ、スポット参戦チームでも、周到に準備を整えれば結果を出せることを証明してくれた。

CarGuy Racingの777号車ランボルギーニを先頭とした“日本勢”の争い
Porsche Team EBIのポルシェ911 GT3 R
レース後の記者会見に臨んだケイ・コッツォリーノと横溝直輝

■ブランパンGTシリーズ・アジアを勝ち抜くカギ

 この日本ラウンドの2戦を終えて多くのドライバーから聞かれたコメントを総合すると、ブランパンGTシリーズ・アジアで上位を得るためには、ピレリの特性を覚えること、日本の基準とは少々違うバトルの戦い方、そして予選順位が重要であると感じられた。

 ピレリについては、「アンダーオーバー」「横方向に動きが大きい」等々さまざまな意見を聞く。使いこなし方にはやはりコツがあるようで、ヨーロッパのブランパンGTシリーズに参戦する千代勝正も「コツはあります」と語っている。これをうまく使うことがやはり大切なようだ。

 そして、予選で前方のポジションをキープしておくこともこのレースのキーポイントなのは間違いない。1時間というスプリントに近いレースであるため、序盤に中団グループで埋もれてしまうと、クルマが良くても挽回するまでにあまり時間がない。「予選が良かったら……」という声も多く聞かれている。

 一方で、多くのドライバーが口を揃えていたのが、この参戦で「楽しかった」「すごくレベルは高かった」というコメントが聞かれたことだ。ふだんの日本のレースとは違うバトルやレーススタイル、ホスピタリティ等々、やはり新鮮な印象が大きかった様子だ。

 来季からスタートする鈴鹿10時間をはじめ、こういったワンメイクのコントロールタイヤを使用するGT3レースは世界的には標準となりつつある。今後、そのなかでの“腕試し”をする際、ブランパンGTシリーズ・アジアは格好の舞台になっていくかもしれない。

ブランパンGTシリーズ・アジア第4戦富士 レース2のスタートシーン
ブランパンGTシリーズ・アジア第4戦富士のスタート前、グリッドで行われた記念撮影の様子

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