残念ながら、日本人ふたりはまだGR010をテストすることができていないが、すでにステアリングを握っているセバスチャン・ブエミは非常にポジティブな印象を受けたようだ。
「クルマの第一印象はとても良かった。確かに、パワーもダウンフォースもTS050と比べて落ちてはいるけれど、パフォーマンスは想像以上だったし、すごく遅くなったという感じはしない」
「何よりも、もう燃料をセーブする必要がなく、ストレートエンドまでフラットアウトでいくことができ、ブレーキをギリギリまで我慢できるのは嬉しい。ピュアレーシングの時代に戻った感じがするよ」
今年も一貴、ブエミと共に8号車をドライブする、ブレンドン・ハートレーもブエミと同意見だ。
「確かに重量は感じるけれど、挙動はレイジーじゃないし、ステアリングはとてもダイレクトなフィーリングがある」
新旧マシンのパワーを比較すると、TS050がエンジン出力500PS(367kW)+前後輪モーター(MGU)出力500PS(367kW)の合計1000PSだったのに対し、GR010はエンジン出力680PS(500kW)+前輪モーター(MGU)出力272PS(200kW)の計952PSと、パワートレーンのトータル出力は低下している(ただし、LMHでは4輪の合計出力は最大500kW=680PSに制限される)。
レギュレーションによりリヤのMGUがなくなり、フロントMGUのみになって失われたパワーを、V6直噴ツインターボ・エンジンの排気量アップ(2.4L→3.5L)等で補った形だ。また、重量は1040kgと、2019/20年仕様のTS050より100kg以上重くなった。また、ブエミもコメントするように、1周あたりの燃料使用量制限はなくなっている。
「確かにパワーは下がった。トータルパワーはバイコレスやグリッケンハウスと同じくらいになるだろうから、今まで以上に厳しい戦いになるのは間違いない」と、ブエミ。
一方、ハートレーは「1000馬力のロケットのような加速はなくなったが、パワーカーブはより普通になったし、(燃料を気にすることなく)ストレートエンドまでアクセルを踏んでいられるのはいい気分だ」と、ポジティブだ。
ただし、MGUのデプロイに関して規定が設けられ、スリックタイヤでは120km/h以上、ウエットタイヤでは140km/h以上にならないとMGUによるハイブリッドパワーが供給されなくなった。低中速コーナーの立上がりでは、フロントが駆動されず、リヤドライブとなるのだ。
「ポルティマオのテストではウエットで走る機会もあったが、やはり少しトリッキーに感じた」とハートレー。
「リヤにもMGUがあった方がトラクションコントロールの自由度がより高いし、バランスなどブレーキのセッティングもいろいろなことができた。以前ほどのアドバンテージはないと思うし、セッティングを最適化する方法が変わったのは事実だ。それでも、エンジニアはいい仕事をしたと思うよ」