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ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2022.07.04 16:37
更新日: 2022.07.04 18:16

レクサスで代役出場の小林可夢偉、新型GT3開発に向け「重要な経験」。自身の来季IMSA参戦には「大きな問題」も

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ル・マン/WEC | レクサスで代役出場の小林可夢偉、新型GT3開発に向け「重要な経験」。自身の来季IMSA参戦には「大きな問題」も

 トヨタGAZOO RacingからWEC世界耐久選手権にチーム代表兼選手としてエントリーしている小林可夢偉は、7月3日に決勝レースが行われたIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第8戦のGTDプロクラスに急遽代役出場を果たし、クラス6位でフィニッシュした。

 5月に負った怪我の影響でレースへの出場が許されないジャック・ホークスワースに代わり、可夢偉はバッサー・サリバン・レーシングの14号車レクサスRC F GT3をドライブし、カナダ・オンタリオ州のカナディアンタイヤ・モータースポーツ・パーク(CTMP/通称モスポート)でのレースに出場。決勝前、可夢偉はフリープラクティス2でのチームメイトであるベン・バーニコートのアクシデントにより走行時間は制限されたものの、レクサスRC F GT3には「かなり適応している」と語った。

■前週アメリカでのレース後、一度ドイツへ

 可夢偉は金曜日のプラクティスで26周を走行していたが、バーニコートのクラッシュにより、土曜日にはさらなる走行を積む時間を手にできなかった。マシンはフロントエンドに大きなダメージを負っていた。

「チームは懸命に働き、クルマは予選に間に合いました」と可夢偉はSportscar365に対し語っている。

「もちろん(予選に向けた)準備がきちんとできなかったのは残念ですが、マシンを修復してくれた人たちは大変だったと思います」

「でも僕らはなんとか時間に間に合わせましたし、それが最大のターゲットでした。少なくとも、予選に出走することはできました。ベンはいい仕事をしました。彼はもっといいラップタイムが出せたはずと言っていましたが、予選はこんなものだろうと思います」

「ちょっと残念ではありますが、レースとはこういうものです。まだ決勝があるので、これで終わりというわけではありません」

ベン・バーニコート/小林可夢偉組のレクサスRC F GT3(バッサー・サリバン)
ベン・バーニコート/小林可夢偉組のレクサスRC F GT3(バッサー・サリバン)

 メルセデスAMG GT3 Evo、およびフェラーリ488 GT3 Evoのドライブ経験を持つ可夢偉だが、今回は初めてミシュランの『パイロットスポーツS9M』スペックを履いた。

「僕が最後に経験したGT3車両は2020年なので、もう2年近く前のことです。(スパ24時間など)ヨーロッパではピレリを履いていて、ここではミシュランなので、今回僕は初めてミシュランでGT3車両をドライブしています。グリップはかなり感じました」

「そしてまた、僕はこのコースを走るのも初めてでした。僕にとって新しいことがたくさんある状態ですが、クルマのフィーリングはとても良かったです」

「もちろん、マシンの状態が素晴らしいかどうかを語るのは難しいのですが、正直なところ、かなりうまく調整はできたと思うし、ペースもつかめたと思います。クルマについてはかなり満足しています。もちろん改善できる点はたくさんありますが、このクルマをドライブするということだけとってみても、僕自身まだまだ勉強しなければなりません」

「マシンは好調で、チームも頑張ってくれています。エンジニアリングのレベルはかなり良いですし、IMSAのGT3の選手権(GTDプロ、GTD)で行われていることは、非常にレベルが高いと感じています」

「GTDプロクラスは非常にレベルが高く、どのチームも速くて強いラインアップを敷いています。コンペティションは非常に高いレベルです。ここで戦おうと思ったら、いいクルマを手にする必要があります」

 可夢偉は今回の代役出場について、前週のワトキンス・グレン6時間レースにアクション・エクスプレス・レーシング(アリー・キャデラック)の48号車キャデラックDPi-V.Rで出場した際に、オファーを受け取ったと明かした。

「アンディ(・グレイブス。TRD-USA)から電話があり、この出場について依頼がありました」と可夢偉は説明する。

「自分のスケジュールを見ると、(ワトキンス・グレンの後は)ヨーロッパへと戻る必要がありました。でも週末に関しては空いていたので、またここ(北米)へ戻ってきたのです」

「モスポートで走るのは初めてなので、とても嬉しいです。じつは、このトラックの名前も知らなかったのです。先週末のワトキンス・グレンの後、(ノースカロライナ州)シャーロットのシミュレーターで、このコースを走ってきました」

 可夢偉はワトキンス・グレン戦のあと、「WECでの役割上、かなり重要な会議」があり、ドイツのTGR-Eへと戻っていたという。また、同時にTGR-Eでは7月8〜10日に控えるWECモンツァ戦のシミュレーターテストにも参加、その後カナダへと再び大西洋を渡った。

IMSA第8戦に急遽代役出場、レクサスRC GT3をドライブした小林可夢偉

 また可夢偉は、トヨタおよびレクサスが早ければ2024年のデビューを予定している新型GT3車両の開発作業を続けているなかで、今回のRC F GT3での走行が重要な役割を果たすと考えているようだ。

 2022年1月の東京オートサロンで発表された『GR GT3コンセプト』の存在から分かるように、トヨタは次世代GT3車両の開発に取り組んでいる。

「トヨタは将来のGT3開発に取り組んでいますし、これは日本においても重要なプロジェクトです」と可夢偉。

「今回の参戦は、僕自身にとっても、そして将来GT3を開発する僕らトヨタにとっても、かなり重要な経験であることは明白です」

「TRD-USAと協力して、次世代のGT3でもいい仕事ができるようにしたいです」

■「楽しんでいる」IMSAへの将来の出場は“仕事量の問題ではない”

 可夢偉自身は現在、IMSAの長距離戦で構成される『ミシュラン・エンデュランス・カップ』の4レースにDPiクラスから出場している。今季よりWECではチーム代表職を兼任し、上に見たようにその役割の業務も増えるなか、2023年はDPiがLMDhに置き換えられることになる。

 可夢偉は2023年のIMSA・LMDh出場の可能性について、自身の仕事量ではなく、WECにおいてトヨタがLMDh車両と戦うことになることの方が「大きな問題」であると述べている。

「トヨタにとって問題ではないですし、僕が(チーム代表としての)職務を持っているかどうかも関係ありません」と可夢偉は言う。

「多くのドライバーが双方にエントリーしているので、IMSAの耐久レースとWECは、日程が重複することはないでしょう。だから正直なところ、それは大きな問題ではないのです。トヨタにとっても(日程が重複していないのなら)問題は生じません」

「それよりも、来年はLMDhがIMSAのトップカテゴリーになりますが、同時に僕らはWECでは(LMDhのライバルとなる)ハイパーカーを走らせることになるので、そちらの方が大きな問題だと思います」

「明らかに、僕の仕事量の問題ではなく、WECとIMSAにおいてどのような競争が起きるか、の方が問題です。まだ、マインドはオープンだと思います。GT3にもチャンスがあるでしょうし、LMP2だっていろいろと(選択肢は)ある。さまざまな可能性があると思います。でもいまはまだシーズンの途中だし、来年のことを話すのには早すぎます」

「間違いなく、僕はIMSAのレースを楽しんでいます。そう言わざるを得ません。僕はIMSAで3シーズン目を迎えました。より多くの人と知り合いになりましたし、人々は“モータースポーツの精神”を持っていて、観客としてそれを楽しんでいます」

「ここでは観客についての(人数等の)制約がまったくないと思います。ヨーロッパに戻ると、まだ規制があります。だから僕にとっては、(アメリカでのレースが)とても楽しい、そういうことなんです」

「来年はどうなるかまだ分かりませんが、2024年、2025年と、チャンスはあります。将来もここ(IMSA)にいることを、僕は楽しみにしています」

アリー・キャデラックからIMSAの耐久レースにエントリーしている小林可夢偉。WEC、IMSAの双方にLMDhを投入予定のキャデラックでのレースは、今季のプチ・ル・マンが見納めとなる可能性も。
アリー・キャデラックからIMSAの耐久レースにエントリーしている小林可夢偉。WEC、IMSAの双方にLMDhを投入予定のキャデラックでのレースは、今季のプチ・ル・マンが見納めとなる可能性も。


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