──では最後の写真にいきましょう。これまた大胆な構図ですね。この取材前に急遽選んでもらったこともあり、加工はされているカットですが。

後藤：これは結構、画角が難しいなと思って。これも観客エリアからで、金網越しに撮ってます。もう、レンズを金網に押し付けるような感じで。富士山とクルマを両方入れようと思うと、タテの構図の方が良いかなと思って。

小林・ヒラノ：左側のガードレールがなぁ……でもしょうがないか。

後藤：あ、これわざとです。

小林・ヒラノ・ナカノ：わざと入れたの!?

後藤：そんな、3人でハモらなくても（笑）。切ろうと思えば切れたんですけど、私は路面に書かれた文字（※コースサイドの開口部を表す番号）を入れて撮りたくて。これも入れて富士山も入れてとなると、ガードレールも入ってきてしまって。

ヒラノ：私なら、地面にカメラ置いて、ライブビューイングで撮りますかね。

後藤：あぁ、なるほど。これもしゃがんで、かなり窮屈な体勢で撮ってますね。

小林：あのね、この写真は、いろいろなものが入りすぎている。

ヒラノ：確かに。富士山なのか、ホテルなのか、クルマなのか、地面なのかっていう。

小林：これもケース・バイ・ケースではあるけど、いろいろな要素を1枚に入れちゃうと、どこにも目がいかなくなっちゃう。マシンの位置がもう少し手前で、もう少し大きく写っていれば、またちょっと違った印象だったかもしれませんね。

──こちらは焦点距離が66mm、SSは1／640です。

小林：もっと望遠で撮って、左と下は切った方がいいんじゃないかな。そうすればマシンも大きくなるし、要素を少し削ることができるから絵柄も決まると思います。もうちょっと、画面を整理した方がいいと思うな。もし路面の文字を入れたいなら、文字とクルマだけにするとか。

後藤：あぁ、そうですね。どうしても「せっかくなら富士山入れたい」って思ってしまうのがごちゃごちゃする要因なんですね。

小林：これがもし金網の内側のフォトグラファーエリアだったら、もうちょっと画角に自由度があるかもれない。

後藤：そうなんですよね、この前後数メートルでも、結構構図がガラっと変わるな、とは思っていて。

小林：そうだよね、本当に撮っている場所から1メートル左に行く、1メートル右に立つ、それだけで全然構図は違ってくるから。だから、アマチュアの方も、悩んだときはちょっと左右に動いてみるといいかもしれませんね。動ける状況なら。ちょっとしゃがんでみるとか、上下の動きだけでも結構変わりますよ。

ヒラノ：我々も撮りたいカメラホール（フォトグラファー向けにコースサイドの金網に開けられた開口部）を他の人が使っていて埋まっているときに、試しに隣のホールで撮ってみたら意外と面白かったりしますからね。

小林：そうそう。だから、後藤さんにはいろいろな立ち位置から、構図を変えて撮ってみることもオススメしたいね。

後藤：分かりました。今回もありがとうございました！

★今回の教え

• レタッチは「正しく見せる」ために使え
• 1枚に「詰め込みすぎ」は禁物！
• 煮詰まったらちょっと立ち位置を変えてみよう

■Profile
ごとう　ゆうき
2019年よりレースアンバサダーとして活躍。写真を撮られているうちに撮ることにハマり、フォトグラファーの道へ。Nikonが展開するスポーツファンのための推し活写真サービス『フォトサポ』アンバサダー。2025年からはスーパーフォーミュラの公式カメラアシスタントを務めるほか、KYOJO CUPでも公式フォトグラファーとして活動する。愛称は「きのちゃん」。愛知県出身。
https://www.kinochan.fun/

こばやし　みのる
日本大学藝術学部写真学科を卒業後、二玄社CAR GRAPHIC写真部に入社。クルマおよびモータースポーツ写真を中心に撮影を続け、やがてフリーランスに。2009年より日本レース写真家協会（JRPA）会長。現在、スーパーGTおよびスーパーフォーミュラで、オフィシャルフォトグラファーを務める。1955年生まれ、神奈川県出身。
https://minoru-kobayashi.com/