──では、今回最後のカットにいきましょう。こちら、だいぶ変化球かと思います。

アンバサダー後藤佑紀と学ぶSF写真道
Nikon Z9 焦点距離:70mm F:6.3 SS:1/320 マニュアル露出

小林:……楽しそうだね(笑)。

──間違いない(笑)。後藤さん、状況の説明をお願いします。

後藤:はい、こちらは夏の富士大会のアフターレース・グリッドパーティーです。お客さんが楽しんでいる様子を撮って回っていたんですけど、ふと見るとステージMCのみかっちゃん(笠原美香さん)がいい笑顔で踊ってて、うしろにティラノ(ザウルス)もいい感じで入っているし、お客さんもいい感じにボケながらも笑っているのは分かるし、1枚でパーティの雰囲気が伝わる写真だなと思って、選んでみました。

小林:なるほどね……フッフッフ。楽しそうなのはすごく伝わってくるよね。これ、どうコメントしていいのかな。

──これは大湯(都史樹)選手のDJ中?

後藤:はい、そうです。(ステージの)上からお客さんを狙っていたんですけど。

※ここで以前の回にも登場したas-web編集部ヒラノ(日本レース写真家協会会員です)がまたしても通りかかる

小林:あ、ヒラノくん、ちょっとちょっと。助けてよ(笑)。こんな変化球写真なんだけどさぁ。

ヒラノ:たしかに変化球ですねぇ。もうちょっと広く撮っても良かったんじゃないですか?

小林:そうだね。何枚かグリッドパーティーの写真がある中の1枚ならいいんだけど、この1枚で状況を伝え切るということを考えるなら、もう少し周りの状況が分かった方がいいよね。

ヒラノ:あとは(ストロボの)スローシンクロなんかを使って、『周りはブレているけど、みかっちゃんだけが止まっている』みたいな手法もありかな。

後藤:なるほどぉ。

小林:大湯選手がDJしているところをうまく絡める、とかね。立ち位置的にできたのかどうかは分からないけど。

後藤:それもそうですね!

小林:だから端的に言うと、楽しそうな笠原さんを表現したかったのか、グリッドパーティーの楽しさを伝えたかったのか。そこがまずは最初の分岐点かな。

後藤:うーん、「どっちも」でしたねぇ、当時の自分は。

小林:ただ、いまは『レースの写真』としての話をしているつもりだから、そうするとやっぱり後者の方の視点が必要で、そのためにはヒラノくんが言うように、もうちょっと広めに撮って、これが何をやっている瞬間なのかが伝わると良かったと思います。もちろん、後からそう言うのは簡単なんだけどね。

ヒラノ:そうなんですよねぇ。

後藤:誰かメインとなる人が欲しかった、というのもありますね。その気持ちが強すぎたのかもしれません。

小林:これ、レンズは何?

後藤:ニコンさんに借りた明るいレンズですね。24-70mmだったはずです。

──データ上、焦点距離は70mmですね。

小林:じゃあ、やっぱりもっと広く撮れたわけだよね。

後藤:そうですね……。

小林:余裕があれば、これを撮って、広い画も撮れれば一番良かったかな。そういった“保険”まで考えて複数のパターンを抑えられるようになったら、一番いいと思います。ただ、僕らみたいに長くなってくると、「あれも、これも」とたくさんのパターンを撮るのがクセになっていて、逆に「結局、何が撮りたかったの?」ということになる場合だってあるから、そういう意味では後藤さんのこの写真は潔いなとも思いますよ。

後藤:もっと広く撮った場合に、それをトリミングするのはいいんでしょうか?

小林:でも、せっかく明るいレンズなんだから、もっと絞りを開放近くまで開けてしまって背景をボカせば、広い画でもちゃんと笠原さんに目が行くカットになったと思いますよ。

──撮影に没頭しているときって、狙った「これ!」というひとつのカットが撮れると満足してしまいがちかと思いますが、そこで冷静になって「他の手法でも撮れないか」と考えてみよ、と。

小林:そうそう。だから前回はグリッドでのメカニックさんの「脚」の写真があったけど、そのときも話したように、そこから自分の中でバリエーションを作っていければいいと思うんですよね。

後藤:どうしても「狙ってたのが撮れた!」で終わってしまいがちなんですよね。そこから「もう一歩」ってことですよね。意識して頑張ってみます!

★今回の教え

  • トリミングの正解は意図次第
  • 「1枚で伝える」なら何が必要か考えよ
  • 「ベストカット」で満足しない!
アンバサダー後藤佑紀と学ぶSF写真道
スーパーフォーミュラでカメラアシスタント兼フォトサポアンバサダーを務める後藤佑紀さんと日本レース写真家協会(JRPA)の小林稔会長

■Profile
ごとう ゆうき
2019年よりレースアンバサダーとして活躍。写真を撮られているうちに撮ることにハマり、フォトグラファーの道へ。Nikonが展開するスポーツファンのための推し活写真サービス『フォトサポ』アンバサダー。2025年からはスーパーフォーミュラの公式カメラアシスタントを務めるほか、KYOJO CUPでも公式フォトグラファーとして活動する。愛称は「きのちゃん」。愛知県出身。
https://www.kinochan.fun/

こばやし みのる
日本大学藝術学部写真学科を卒業後、二玄社CAR GRAPHIC写真部に入社。クルマおよびモータースポーツ写真を中心に撮影を続け、やがてフリーランスに。2009年より日本レース写真家協会(JRPA)会長。現在、スーパーGTおよびスーパーフォーミュラで、オフィシャルフォトグラファーを務める。1955年生まれ、神奈川県出身。
https://minoru-kobayashi.com/

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