大嶋は38周目に2回目のピットストップへ。純粋な2ストップ作戦で2位となる平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)も含め、全車のルーティンピットが終わった40周目の時点で大嶋は8番手となっていた。既に予選順位からは7ポジションアップだ。この段階で全車の燃料搭載量は原則として同じだが、タイヤの種類とマイレージには違いがある。
ソフトで、しかも比較的“若い”タイヤを履いていた大嶋は快ペースでの走りを続け、終盤10周で3台をコース上でパス、5位まで上がってゴールを迎えた。
レース後、好走を讃えつつ「もうミディアムは要らないって感じですね?」と問いかけると、大嶋は笑いながら「まあ、僕としては(現状は)そうですね」。さらに「マシンの感触は良かったです。前の富士(予選13番手から決勝7位入賞)以上にいいレースができたと思います」と、充実の表情を見せた。
実際、大嶋のペースは序盤から良かった。1周目のピットインの後、トップとの差が少しずつ詰まっていたのである。これは、という予感はタイミングモニターからも伝わってきていた。
もちろんこの状況には、今回のレースでクルマの力が他の18台とは一段違うレベルの仕上がりにあったウイナー、石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)がレース前半は1周目に素晴らしい“奪首”を見せた松下信治(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)に抑え込まれる格好になっていたことの影響もあっただろう。ともあれ、ソフトを履いた大嶋のペースは間違いなくトップレベルにあった。
片岡監督は「レース中の分析で、すべて理想通りに運べば4位まで見えていました」と語る。しかしながら、そこは相手があるスポーツ、そうそう全部がうまくはいかない。
最大の難所は関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)に追いついたレース中盤の局面だった。だが、ここでもそれほど長くはロスせずに大嶋はコース上でオーバーテイクしてみせる。「あれが今日のハイライトでしたね。あそこではまっていたら、もっと後ろの順位で終わっていたかもしれません」(片岡監督)。
終盤の入賞圏でのオーバーテイク連発も大嶋は見事だった。抜かれた1台、山下健太(KONDO RACING)も当時は自身がミディアムで走っていたとはいえ、「大嶋選手は速かったですね」と苦笑していたほどで、傍目にはイージーな状況にも見えた。
だが、大嶋本人は「いやいや、簡単じゃないですよ。いくら(タイヤ的に)ペースが違っても、もてぎで抜くのは難しいですから。相手だって当然、意地を張ってきますからね」と語る。いずれにしても素晴らしい走りだった。作戦による大浮上劇と見られがちだが、ドライバーの力あってこその作戦成就である。
