SF14からSF19へと進化するなかで、エアロダイナミクスはさらに洗練された。しかし、最終コーナー全開を実現したのは「空力よりもタイヤが変わったことが大きかったのではないか」と山本を担当するダンディライアンの杉崎公俊エンジニアは分析する。

 今季より前輪の幅が20mm拡がり、フロントのグリップ力が上がった。杉崎エンジニアによれば、これまでは前輪のキャパシティ不足をエアロで補っていたという。しかし、前輪が太くなりメカニカルグリップが向上したため、そのぶんエアロバランスをリヤに寄せることが可能となった。

 結果、トータルでのダウンフォースが増え、特に高速コーナーでクルマの安定性が大きく向上。それが最終コーナーでのアクセル全開と、1分3秒台というタイムを可能にした要因である。

 もしもQ3直前に雨が降らなかったら「1分3秒5くらい出ていたかもしれないですね」と、杉崎エンジニアは予想する。それほど山本のクルマは決まっていたのだ。

 昨年までの無限時代、山本はとにかくフロントの入りを重視し、どちらかというとオーバー傾向のセッティングを好むと考えられていた。しかし、今季より山本と組んだ杉崎エンジニアは「山本選手とクルマを作っていく過程で、決してそうではないと分かりました」という。

「フロントが欲しいのは皆一緒ですが、そうするとどうしてもリヤがなくなりやすい。しかし、山本選手は多少リヤがなくても乗れてしまうため、オーバーを好むと考えられていたのです。ウチのクルマはどちらかというとリヤを安定させる方向だったので、最初は『どアンダーで乗れない』と言われると覚悟していたのですが、意外とそうでもなかった」

 つまり、ダンディライアン車の美点であるリヤの安定性を保った上で、山本が重視するフロントの入りを確保したセッティングを導き出したことが、好調の理由のひとつであるといえる。改めてオンボード映像を見ると、ナチュラルなターンインと、修正舵の少なさが非常に印象的である。

 しかし、優勝後改めて山本にQ2の話しを聞くと「最終コーナーは、実は全開ではありませんでした」と述べた。本人は全開のつもりだったが、後でデータを確認したところわずかながらスロットルが戻っていたようだ。

「ロガーを見たら少し右足が緩んでいました。最終コーナーは尋常ではないGがかかり、首もきついけど足も動いてしまう。ハンドルを切りながら耐えていたつもりでしたが、右足が浮き上がってしまっていたようです。そうならないように足を突っ張ると、どうしても体が固くなりコントロールし辛くなる。体を鍛えるのか、技術を磨くのか、来年以降の課題ですね」

 エスケープゾーンが少ない最終コーナーで、アクセルペダルから足が浮くほどの高G。スーパーフォーミュラは異次元の速度域に入りつつあるといえるが、それについて山本は率直な意見を口にした。

「コースのレイアウトや環境に対して、もしかしたら今のクルマは速すぎるのかもしれない。今回はみんなコース上に留まることができたし、最終コーナーでのクラッシュもなかったけれど、このスピード域で戦うということを、もう1回考え直した方がいいかもしれないですね」

 1分3秒953というタイムは単なる数字の並びではなく、このレースが異常な領域に入りつつあることを啓示する、警戒標識的な意味も含んでいるのかもしれない。

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