──イゴール選手は今季PONOS NAKAJIMA RACINGからSUPER FORMULAに出場していて、小暮選手も長く在籍していました。中嶋悟総監督からはどんなアドバイスを受けてこられましたか?
小暮:僕の時代と、イゴール選手の時代ではかなり違うんじゃないかと思います。今ももちろんお元気ですが、僕の頃はそれこそ、言葉の数は少ないけど、良い意味での威圧感があったと思います。僕たちをプロとして扱ってくれるので『細かく言う必要はないだろう』というスタンスです。ただ、僕はフォーミュラ・ニッポンの初年度で、さんざんクルマを壊したので(苦笑)。それでも、中嶋さんがすごいのは、最終戦でも『アクセルを抜くな。行け! 来年乗せてやるから』と無線で言ってくださったこと。すごくありがたかったです。
イゴール:今のお話を聞くと『ほとんど変わってないな』と思いますね(笑)。中嶋さんは今でもすごく熱心で、僕たちドライバーよりも熱心なんじゃないかというくらいです。走っているときはいつもサインガードに座っていますし、レースの内容が良いほど貧乏ゆすりが止まらないんです(笑)。逆に貧乏ゆすりが止まると『あ〜終わったな』みたいな(笑)。
小暮:それ、僕たちの時もあった(笑)。
イゴール:今年の年明けのSUPER FORMULAのテストで、僕は初めてクラッシュしたんです。でもピットに戻ってきたら中嶋さんは『やっとぶつかったな』とおっしゃっていましたね。
小暮:僕のときは『もう勘弁しろ』だった(笑)。もちろん同じ原因で当たるのは良くないですけど、それでも『自分の走りをしていけ』と言ってくださっていました。
イゴール:口数がそれほど多い方ではないですが、その分、放たれる言葉の重さがぜんぜん違う感じがしますね。
──改めて小暮選手に。最近のSUPER FORMULAについての印象を教えてください。
小暮:乗らなくなってからずいぶん経ちますけど、『SF23はカッコいいな』と思います。もちろん昔のスウィフトやローラの時代もそれぞれ良かったですけど、デザインに時代を感じますし、今のマシンはやはりカッコ良いですよね。またレベルは比較することはできませんが、ドライバーのレベルがものすごく高いし、接戦ですよね。今だと5周で疲れちゃうかもしれませんけど(笑)、SF23に乗ってみたいですね。


●小暮、イゴール、ふたりともクルマの趣味はけっこうシブめ?
──ヨコハマタイヤのフラッグシップブランド『ADVAN』について、おふたりはどんな印象をもっていますか?
小暮:僕はふだんから履かせていただいていますし、軽自動車にもスポーツカーにも履かせています。ADVANで言うと、やはりNEOVAですよね。昔から馴染みがありますし、パフォーマンスの高さがあります。自分の中でグリップ力を求めたときにはやっぱりADVAN NEOVAを履きたいな、と思います。
──最近の小暮選手のクルマのコレクションはどんな感じなのでしょうか?
小暮:最近はダイハツ・アトレーにもADVANを履かせていますし、チューニングしたトヨタ・カローラで今度、某チームの監督さんとバトルします(笑)。
──カローラ!? どの世代ですか?
小暮:70カローラ(4代目。AE70)です。シャシーがAE86と同世代のFRのカローラで、それに4AGエンジンを載せて、ADVAN NEOVA AD09を履かせています。
イゴール:クルマ選びがシブいですよね(笑)。AD09はストリート向けのタイヤなので、一般道でもサーキットでも対応できる幅が広いイメージですよね。
小暮:あとはAE86とか、AA63のトヨタ・コロナとか。独立サスペンションのやつです。元ホンダ・ドライバーなのにトヨタ車ばかりですね(笑)。アメ車ですか? もう動いてないです(笑)。
──イゴール選手にとってのADVANブランドのイメージはいかがですか?
イゴール:僕は小さい頃から、昔のビデオオプションなども観てきているんですよね(笑)。それこそ、かつてのブラックにレッドのラインが入ったADVANカラーのポルシェとか、その頃の時代のクルマも記憶にありますし、ADVAN Racingのホイールデザインもけっこう好きなんです。特にADVAN RacingのRGとか、6スポークのホイールが好きですね。
小暮:彼の方がけっこうシブいんじゃないですか(笑)?
──ちなみにイゴール選手はふだんどんなクルマに乗っているのですか?
イゴール:クルマはあまり持っていないんです。でも、最近お借りしているマツダ・ロードスターにADVAN NEOVA AD09を履かせています。ちょっとオーバースペックなのですが、一年ほど乗ってクルマに合ったグリップ感になってきました(笑)。
──過去の記憶から言ってしまうのですが、小暮選手はちょっとグランツーリスモは苦手ですよね。イゴール選手はグランツーリスモ界の世界チャンピオンでもあります。
小暮:はっきり言いますね(笑)。でもたしかにイゴール選手はすごいですよね。僕にはない感覚をお持ちなんだと思います。
──最近はシミュレーターも進化していますが、小暮選手はシミュレーターには乗っていますか?
小暮:以前、メーカーのお仕事で乗ったりはしていたのですが、僕はそれほど経験がないですね。最近はシミュレーターありきの世界になってきていますが、僕は世代的には少し前なのかもしれないですね。いまだにイメージトレーニングですから(笑)。でも、初めてのサーキットに行くときは活用しています。
──イゴール選手におうかがいしたいのですが、グランツーリスモでもシミュレーターでも、タイヤの挙動はどの程度、リアルと共通しているのでしょう?
イゴール:そこがいちばん難しいところです。シミュレーターによってタイヤの挙動も変わってきますし、メーカーのシミュレーターなどに行くと再現度がやはり高いです。実車でセッティングができるようにするのは、メーカーから受けた値を入力して、実車とのアジャストをちゃんとしてからプロセスをはじめないと、サーキットに来てからすべて外れてしまいます。最初のアジャストがとても大事だと思います。タイヤはある意味、謎が多い物体でもあるので、それを100パーセント分かっていない状態で入れることもすごく難しいですし、微調整をして正しい方向に向けることが重要ですね。
──おふたりの今季、その先の目標を教えてください。
小暮:昨年チャンピオンを獲らせていただいたのはヨコハマさんのおかげでもありますし、チームのおかげでもあります。ただ今シーズンはすごく苦戦しています。性能調整の影響もすごく強いとは思いますが、やはりチャンピオンを争うチームはGT300でも同じチームになってきています。そんな中で、与えられた状況のなかでベストを尽くすだけだと思います。シーズン後半戦に盛り返したいですし、良いレースをして、結果的に昨年度のようにうまくはいかないにしろ、力を尽くして、昨年のチャンピオンにふさわしく、また優勝、チャンピオン争いに加わっていければと思っています。
イゴール:僕たちは開幕戦で大きなポイントを持ち帰ることができましたし、チームとしては過去いちばん良い成績を積み重ねることができています。今年はチームランキングが接戦で、その中でどれだけ上位を保てるかだと思っています。次のSUGOはレクサスRC F GT3にとっても比較的良いと思いますので、中盤戦でしっかりとポイントを稼いで、良い順位で終えられるようにしたいですね。
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⚫︎小暮卓史(こぐれ・たかし):1980年生まれ、群馬県出身。ポケバイやカートなどを幼少時から乗り、高校入学と同時にカートのレースに参戦。FJ1600、フォーミュラ・トヨタを経て2001年に全日本F3デビュー。2年目にチャンピオンとなり、マカオF3でも3位表彰台を獲得。2003年にナカジマ・レーシングからフォーミュラ・ニッポンデビューを果たすと、2年目の2004年に初優勝、その後はホンダ陣営のエースとして予選で速さを見せ、チャンピオン争いに何度も加わるも不運やトラブルでタイトル獲得に恵まれず。スーパーGTでは2010年にGT500、そして昨年GT300でチャンピオンに輝いた。予選の驚異的な速さや、普段から無類のクルマ好き、そしてメディアやレース中の無線での飾らない言動と相まって『ピュア・ドライバー』としてファンに知られている。
⚫︎イゴール・オオムラ・フラガ:1998年生まれ、石川県金沢市出身の日系ブラジル人。日本でカート、そしてグランツーリスモをはじめ、小学校卒業とともにブラジルに帰国。一時レース活動を辞めるも、2014年にブラジルF3で再開。2018年にはFIAグランツーリスモチャンピオンシップにブラジル代表として参加し、個人部門の初代王者に輝く。2019年に渡欧してFIA F3などを経て2022年に日本へ。全日本スーパーフォーミュラ・ライツ、スーパーGT300クラスに参戦し、今季ナカジマ・レーシングからSUPER FORMULAにデビュー。第3戦モビリティリゾートもてぎで3位表彰台を獲得した。


