「まず1997年に坂東正明さんとGT300でチャンピオンを獲って、2007年ごろにマサ(坂東正敬監督)から『来年またバンドウでもう一度乗ってくれないか』と強烈なオファーをもらっていたんですよ。話を聞いたら面白そうだったから引き受けて、マシンをIS350に変えて苦労していたけど、もてぎで最後尾から優勝する伝説を作れました。翌年は片岡とパートナーを組んでチャンピオンを獲ることができた。これも“息子”とのチャンピオンだったので、親父の正明代表に恩返しできたかなという思いもあります。親父と息子のチームでチャンピオンを獲れるなんて、なかなかない。僕のGT人生での思い出深いレースですね」

 そして、その当時チャンピオンを獲得したマサ監督が現在オートスポーツwebで執筆している『坂東マサの俺に書かせろ!』コラムでは、引退を決めた織戸からマサ監督に連絡があったことが明かされている。改めて織戸にそのときのことを聞くと、引退の意思を伝えたのは何気ないやり取りの中だったという。

「マサもヨコハマタイヤを履いたチームとしてずっとやってきていて、ヨコハマと共にやり遂げるつもりだったと思うんですけど、今年になって急に参戦終了することになってしまった。だから俺も『ヨコハマが今年で終わりだから、今年でスーパーGTをやめようかなと思っているんだよね。ヨコハマと一緒にやめるわ』って、別の話をしているついでに軽いノリで連絡したんです。そうしたらマサから『いや、かっこいいね』って返ってきました(笑)。本当にそれだけよ」

 そして、今季限りでスーパーGTからの引退を決めたのは織戸だけではない。1997年の最終戦SUGOでGT300タイトルを激しく争った新田守男も、直近の第7戦オートポリスで優勝を飾ったばかりのタイミングでスーパーGTドライバーとしての「ひと区切り」をつけると表明した。

「このあいだ優勝したばっかりなのに引退なんて、かっこよすぎるでしょ。ずるいですよ、あいつ(笑)。いや、新田さんは僕の1歳上なんですけど、1997年の最終戦SUGOで僕たちが同じ周にピットアウトしたんです。ピットロードで僕の前に新田さんがいて『この人を抜けば俺がチャンピオンだ』という変な緊張感もありましたね。雨の中スリックタイヤでピットアウトしたら、新田さんが3コーナーあたりでハーフスピンして、なんとか僕のチャンピオンが決まったんです」

「新田さんとは、その後も僕がウェッズスポーツIS350、新田さんがARTAガライヤのときなど、GT300のトップ争いをずっと繰り広げてきた時期があって縁が深いです。何回か飲んだこともありますけど、もう本当にいい加減な男で(笑)。いかにも“昭和の男”という感じなんですけど、だからこそ好きなんですよね」

 そして、織戸の引退後の活動について尋ねると、返ってきたのは拍子抜けするほどあっさりとした答えだった。

「特に変わらないですよ。今までやってきたことと全く変わらない。レース100%で生きているわけじゃないので、それ以外にもやっていることはたくさんあります。レースにも何らかの形で間違いなく関わり続けるので、ほとんど変わらないと思いますね。最近は乗らないレースも何度かありましたけど、本当に人に恵まれたレース人生でした。ただ、レースを完全にやめるわけではないので、まだまだいろいろなところで走る姿は見せられると思います」

坂東正明GTA代表コメント「クルマを横にしていたただの小僧がようやく大人になった」

「(千葉県)船橋で夜に(クルマを)横になって走らせていたただの小僧がレースをやりたいと言ってきて、きちっとやりたいんなら、とウチ(坂東商会)の社員にさせた。会社の近くの6畳3万円(/月)くらいのアパートで、本人は会社勤めしたかったかどうかわからないけど、社員としては犬のアドバンの世話だけ。あとは雑誌屋さんとかのプロモーションの一環として坂東商会の名前で走って宣伝してくれていた。夜な夜な走りに行って、当時はS14シルビアだったかな、昼間はクルマを直していた。まあ、他に何もできなかったからな。それでちょっと売れてきたら天狗になっていた」

「それから独立した方が儲かるんじゃないかと言って、ちょうど10年社員としてやったので、あとは頑張れと。あの時のあいつはそんなに苦労していない。俺が苦労していた。今はあいつもレースのいろいろな付き合いで自分で商売をやるとなって、坂東商会の経験が少しは役に立っているかもしれない。ドライバーは遅くなったらしょうがない。いいんじゃないの、若いのが出れば。最近はグリッドでもよく声をかけてくれて、あのただの小僧が人としての礼儀とか、ようやく大人になったなと思っている」

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