それでもまだ9位。カナダGPのようなこともあっただけに、チームとしては確実にこのポイントを掴み取っておきたい。46周目に入ったところでテンプルはアロンソにペースダウンの指示を出した。

MCL「この周を含めて残り6周だ。後ろからの脅威はない。タイヤの温度をキープしてマシンを持ち帰ることに集中しよう。後ろのRAI(キミ・ライコネン)は周回遅れ、次はWEH(パスカル・ウェーレイン)で30秒後方だ」

 しかしアロンソは満足していなかった。あるいは、一瞬でも目の前に見えたチャンスを為す術もなく見逃すしかなかった喪失感が、彼のレーシングドライバーとしてのプライドに火を点けたのかもしれない。

2017年F1第8戦アゼルバイジャンGP マクラーレン・ホンダのピットボード
2017年F1第8戦アゼルバイジャンGP マクラーレン・ホンダのピットボード

MCL「タイヤはどうだ? 何か問題があれば、後方はもう1回ピットインをしても大丈夫なギャップがある」

ALO「それよりも大きな問題はノーバッテリー、ノーパワー。そのせいでコーナーでもの凄くリスクを負って攻めなければならないんだ」

MCL「分かっているよ、でも今P9だ。チームにとって重要なポイントだ」

 FP2でアロンソ、FP3でストフェル・バンドーンのギヤボックスが壊れたように、実はギヤボックスに不安を抱えながらのレースだった。バクーシティサーキットではギヤシフトの頻度が高く、タイヤが縁石やウォールと接触する機会も多いだけに、ギヤボックスに負荷が掛かる。だからチームは確実に完走するため繰り返しペースダウンを指示したのだ。

 それでもチームからの指示を撥ねつけ、アロンソはファステストラップ狙いのタイムアタックを行なうチャンスを要求した。

 パワーユニットのモードを切り替え、ERSからの放電を行なわず充電だけを行なってバッテリーをフル充電する。ERSは1周あたり4MJの放電が認められているが、充電は2MJまで。つまり1周4MJのフルアシストを得るためには、その前の周にバッテリーから1MJも使わずに走らなければならいのだ。

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