フロントウイングに目を移すと、フラップのトレーリングエッジがギザギザした処理になっており(赤い矢印の部分)、ここで縦渦を発生させていることがわかる。いわゆるボルテックスジェネレーターだ。スロットギャップを抜けた空気が流れたいように流れるのではなく、空力効率を高める方向に制御する狙いだ。局所的にはドラッグ増になるが、車両全体としてはパフォーマンスが上がるため、とくにメルセデスは積極的に用いている。
ノーズ下からサイドポンツーンにかけての空力処理も見ごたえがある。サスペンションアーム類の下にあるターニングベーンは整流効果よりも、むしろそれ自体でダウンフォースを発生させるデバイスだ。ウイングを90度倒して用いていると考えればよく、跳ね上がったターニングベーンの裏側、すなわちノーズの下が負圧域になってダウンフォースを発生させる。メルセデスの前身であるホンダ・レーシングが熱心に開発していた領域だ。
その後方にあるデバイスは、後ろ下がりになった形状から、空気の流れを下向きに変え、フロントで一度仕事をした空気をフロア下などに流し、もうひと仕事させる狙いだろう。