メルセデスのアドバンテージは、パワーユニットだけではない。それはメルセデス製のパワーユニットを搭載する他チームと比較しても明らかだ。

 メルセデスは2016年シーズンに向けて、細かな改良を重ねてきた。昨年からテストを続け、今季から本格採用した「Sダクト」も、そのひとつだ。Sダクトとは、ノーズの下側(上写真)から取り入れた空気を、ノーズ上面(下写真)から排出する空力システム。F1で最初に採用したのは2012年のザウバーで、クラッシュしたときにノーズが相手のドライバーを直撃しないよう、ノーズ高を低く制限したシーズンだ。レギュレーション変更前から2012年の空力開発を進めていたチームは、ノーズ全体を低くするのではなく、先端部分のみ低くすることで対処。その結果、先端部分とコクピット前方のバルクヘッドで段差のあるノーズが出現した。

メルセデスの「Sダクト」
メルセデスの「Sダクト」

 ザウバーが採用したSダクトは段差部分で生じた乱流を、ノーズ上面から排出する空気によって整流し、ドラッグを軽減する役割を果たしていた。この年ザウバーは、セルジオ・ペレスが3回、小林可夢偉が1回と合計4回もの表彰台を獲得する大活躍。2013年にはレッドブルがSダクトのアイデアをコピーした。その後、フォース・インディアとマクラーレンが追随し、今年はトロロッソとメルセデスが採用している。

 メルセデスはSダクトのプロトタイプを昨シーズン終盤からテストしており、今シーズン開幕前のバルセロナ合同テスト1回目から、Sダクト搭載の新型ノーズを投入していた。バーレーンGPではニコ・ロズベルグが開幕から連勝を果たし、ここまでメルセデスの計画は順調に進んでいると言ってよいだろう。

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