メルセデスのチームメイト同士の接触によって、勝敗が決した2016年オーストリアGP。レース後に開かれたメルセデス・チームの記者会見では「なぜハミルトンを1ストップのままにしておかなかったのか?」「なぜチームオーダーを出さなかったのか」という質問が相次いだ。
ウルトラソフトタイヤで21周目まで引っ張ったルイス・ハミルトンは1ストップ作戦が可能だったのに対して、10周目にピットインしたニコ・ロズベルグが2ストップ作戦なのは明らかだった。ハミルトンが54周目にピットインしなければ、55周目にロズベルグがピットインした時点で、ハミルトンは単独トップとなり、そのまま優勝していたはずである。
会見でトト・ウォルフも「当初、ルイスは1ストップだった」と認めている。
本来メルセデスはスーパーソフトでスタートするフェラーリとレッドブルに対抗して、できるだけウルトラソフトで引っ張って1ストップする予定でいた。しかし、6番手からスタートするロズベルグは追い上げるために2ストップとし、ワン・ツー・フィニッシュを目論んでいた。
ところが、スタートするとロズベルグのペースが予想以上に良く、あっという間にポジションを上げてきた。テクニカル部門エグゼクティブディレクターのパディ・ロウは、ハミルトンを2ストップにした理由を次のように説明する。
「ルイスの1ストップは他の全員を倒すには十分だったが、チームメートのニコには敵わないことがわかった。ニコの2ストップが予想よりも速かった。そのためルイスにも再びピットインさせて、もう1セットのソフトタイヤを使わせることにした。ニコがスーパーソフトにしたのは、もうソフトタイヤを持っていなかったからだ」