それでも、自力に勝るサインツはファイナルラップのホームストレートでようやくガスリーのDRS圏内に入るが、オーバーテイクには至らなかった。そこには、ガスリーの冷静な対応があった。

「回生エネルギーを温存していたんだ。オーバーテイクボタン用に使うためにね」(ガスリー)

 このイタリアGPからパワーユニットは予選専用のICE(内燃機関エンジン)モードが禁止され、ICEモードは予選とレースで同一でなければならなくなった。そのため、昨年のオーストリアGPでマックス・フェルスタッペンが逆転優勝した時に使用したような「エンジン11、ポジション5」という設定変更はできなくなっていた。

 ただし、それはICEモードであって、回生エネルギーの設定は規制の対象となっていない。

 ファイナルラップでようやくDRSを使用して、ガスリーのスリップストリームに入ったサインツも、ガスリーがオーバーテイクボタンで防御したことを認めている。

「やっとピエールのスリップストリームに入ったと思ったら、彼がバッテリーを使って逃げていくのがわかった」

 つまり、ガスリーはサインツがDRS圏内に入ってくるまではバッテリーを温存して、タイヤのグリップ力を使ってコーナーで逃げていた。そして、サインツがDRS圏内に入ろうとしてきたファイナルラップへ入る最終コーナーの立ち上がりで、サインツに詰められないよう、オーバーテイクボタンを押して逃げた。

 そのことはファイナルラップに入るときのコントロールラインの速度が物語っている。

ガスリー
52周目:時速303.5km→53周目:時速313.9km

サインツ
52周目:時速316.0km→53周目:時速332.9km

 53周目のコントロールライン上のスピードは、ストレート区間が速いサインツがスリップストリームを生かして前の周よりも時速約17km速いが、ガスリーもオーバーテイクボタンを押して加速。前の周より時速約10kmスピードアップしていた。

 コントロールラインの115m先で、いよいよサインツがDRSのボタンを押してリヤウイングを開放するが、サインツは1コーナーまでにガスリーをとらえることはできなかったことを考えると、サインツのバッテリーがストレート上で切れていた可能性が考えられる。

 最大のピンチを凌ぎ切ったガスリーはファイナルラップもミスなくすべてのコーナーを走り切り、トップでチェッカーフラッグを受けた。

 敗れたサインツは言った。

「あと1周あれば、優勝できていたかもしれない。でも、今日のピエールの走りは見事だった。あれは最高のディフェンスだったよ」

2020年F1第8戦イタリアGP 優勝したピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)と2位カルロス・サインツJr.(マクラーレン)
2020年F1第8戦イタリアGP 優勝したピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)と2位カルロス・サインツJr.(マクラーレン)

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