■シューマッハーとは違う、ベッテルが置かれた環境

 ベッテルは勝ちたいと思っている。だが、彼は5度目の選手権タイトルを勝ち取るために、本気で必要な努力を傾けようとしているだろうか?

 ベッテルがフェラーリに加わった時、彼はミハエル・シューマッハーと同様の働きをして、チームの状況を好転させることを夢見ていた。すでに4度も世界チャンピオンになっている彼に、それに必要な才能があるのは間違いない。とはいえ、その武器となるクルマを彼が自分で作ることはできず、戦うための準備の一部はテクニカルチームに頼らざるをえない。

 彼の加入以来、フェラーリのマネジメント組織は少しも改善されず、むしろ以前より悪くなっている。パドックで最も評価の高いテクニカルディレクターのひとり、ジェイムズ・アリソン(写真下)はすでにチームを去った。彼の後任となったマッティア・ビノットは、エンジン技術者としてはきわめて優秀ながら、テクニカルチームのリーダーというタイプではない。

セバスチャン・ベッテルとジェイムズ・アリソン
セバスチャン・ベッテルとジェイムズ・アリソン

 つまり、フェラーリの技術陣はリーダーがいない横並び構造の組織になったのだが、実は彼らが何よりも必要としているのは優れたリーダーなのだ。また、アリバベーネはチームを率いるにはまだ経験が足りず、社長のセルジオ・マルキオンネは、レースの世界ではなく自動車業界で育ったビジネスマンだ。

 ベッテルが立たされている状況は、5年間で一度もタイトルを獲れず、シューマッハーの黄金時代にはほど遠い結果に終わった、フェルナンド・アロンソの在籍期間と似ている部分もある。

 シューマッハーは、ジャン・トッドのチーム改革が軌道に乗り始めたところでチームに加わった。そして、ロス・ブラウン、ロリー・バーンを加えて、彼を中心としたチームが築かれた。一方、ベッテルがマラネロに来たことで、チームには新たな核ができたが、彼はスタッフを誰も連れてこなかったため、フェラーリは彼を中心としたチームを作るためのフレッシュな人材を欠いていたのだ。

 さらに言えば、ベッテルが2015年に力強いシーズンを送れたのは、前年途中までチームを指揮したステファノ・ドメニカリ時代の遺産のおかげでもあった。ドメニカリがフェラーリを去ってからすでに2年半が経ち、彼の部下だった人々も、その多くがチームを離れている。

 状況は変わりうる。だが、テクニカルチームの組織替えが実を結ぶまでには、少なくとも3年はかかるのが普通だ。残念なことに、今年に入ってからの人事異動は良い方向への変化とは思えず、ベッテルはそれ以上に長く待たされる可能性もある。

本日のレースクイーン

大宮凛子おおみやりんこ
2026年 / オートサロン
オーリンズ
  • auto sport ch by autosport web

    FORMATION LAP Produced by autosport

    トランポドライバーの超絶技
    【最難関は最初にやってくる】
    FORMATION LAP Produced by auto sport

  • auto sport

    auto sport 2026年4月号 No.1618

    新世代F1テクニカルプレビュー
    バーレーンで見えた5つのポイント

    新型GT500車両メーカーテスト
    「見えるもの。見えないもの」

  • asweb shop

    2026年のF1シーズン開幕を記念して、autosport web shopでは対象のF1新作グッズをご購入で送料無料となるフェアを開催中!

    新作アイテムはもちろん、気になっていた過去シーズンの人気商品を一緒にご購入いただくのもおすすめ。