■ベッテルの「フェラーリ・ドリーム」をかなえるためのふたつの要因

 今年29歳のベッテルは、彼自身が望めば、まだ数年は現役でレースを続けることができる。とはいえ、彼はこの先さらに2、3年を、なかなか勝てる体制を作れないチームにフラストレーションを感じながら過ごしたいと思うだろうか? また、はたして彼は、アロンソが3度目のタイトルを切望しているのと同じくらいに、5度目のタイトル獲得を強く望んでいるだろうか?

 ベッテルは持てる力のすべてを出しきる必要があり、それでもなお選手権には手が届かないかもしれない。フェラーリがタイトルを狙えるクルマを作れない可能性もあるからだ。その歴史を通じて、スクーデリアには輝かしい栄光の時期も何度かあったが、その谷間には不振にあえいだシーズンも少なくなかった。次に選手権タイトルを獲るまでに、また21年待たされることなどありえないと、誰が言い切れるだろうか。

 彼の現在の契約の期限は、来年末までとなっている。2018年以降、アロンソが引退するか、あるいはストフェル・バンドーンが期待に応えられず、ジェンソン・バトンが呼び戻されることもなければ、ベッテルはマクラーレンに新たな活躍の場を見いだせるかもしれない。さもなければ、フェラーリでもう1年我慢しているうちに、メルセデスかレッドブルに空席ができる可能性もある。

2016年F1第3戦中国GP 2位表彰台を獲得したセバスチャン・ベッテル
2016年F1第3戦中国GP 2位表彰台を獲得したセバスチャン・ベッテル

 だが、ベッテルの「フェラーリ・ドリーム」は、まだ終わってはいない。少なくとも、あと一度マネジメント体制が変わるまでは、彼はマラネロにとどまろうと考えるのではなかろうか。ただし、それが成功につながるか否かは、次の2つにかかってくる。ひとつは、まずベッテル自身が、2014年のアブダビ・テストでフェラーリのガレージを訪れたときの強い決意と意欲を取り戻せるかどうか、もうひとつは、フェラーリが現在のトップダウン型の組織から脱却して、体制を構築し直せるかどうかだ。

 それができなければ、ベッテルとフェラーリが抱いた夢は、幻に終わらざるをえないだろう。

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