2020年はピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)とセルジオ・ペレス(レーシングポイント)が初優勝を挙げ、アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)とランド・ノリス(マクラーレン)、エステバン・オコン(ルノー)が初表彰台を獲得するという初記録尽くしでもあった。
20人のレギュラードライバーのなかで実に13名が表彰台に立ったという記録からも、波乱の多い激動のシーズンだったことが分かる。メルセデスAMG独走で退屈だと言われた一方で、2番手・3番手争いがこれだけ波乱に満ちたシーズンというのも珍しく、充分にエキサイティングだったと言える。

ただしそれは“3強チーム”の一角であるはずのフェラーリが大ゴケし、レッドブル・ホンダも1台しか上位争いに加わることができなかったという状況によるところが大きかった。つまり例年なら“上位6台”がほぼ確定の状況なのに対し、今シーズンは常にトップ争いをしているドライバーが3人しかおらず、そのうち1人でも躓けば中団グループトップのドライバーに表彰台のチャンスが巡ってくるわけで、だからこそ13人ものドライバーが表彰台に立つという結果になったわけだ。
ただ、トップと中団グループの差がこれまでになく縮まっていたからでもある。トップが躓けば中団に喰われてしまうくらいの余裕しかなく、僅かなミスでも犯せば無傷で表彰台に立てるような余裕はなかったということだ。
その最たるものがガスリーとペレスの初優勝だ。トップが大きく躓けば中団グループに優勝のチャンスが巡ってきて、なおかつそのチャンスを最後まで守り切るだけの速さが中団グループにあった。メルセデスAMG独走ばかりが批判されたが、実際にはトップと中団グループの差はこれまでになく縮まり、激戦のシーズンだったと言えるだろう。

