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F1 ニュース

投稿日: 2021.03.24 09:20
更新日: 2021.03.24 12:59

【中野信治のF1開幕戦展望】角田裕毅への高まる期待「上位を走行できない理由が見当たらない」

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F1 | 【中野信治のF1開幕戦展望】角田裕毅への高まる期待「上位を走行できない理由が見当たらない」

 今の段階で開幕戦のウイナーの名前を挙げるのなら、やはり期待も込めてフェルスタッペンですかね。開幕戦のバーレーンはコース的に特徴が掴みづらくて、どのクルマが速くてどのクルマが遅いというのが本当にわかりずらいサーキットです。高速コーナーもなく、暑いのでうまくタイヤを保たせたいですし、砂漠なのでコース上には砂が出ます。そういったいろいろな状況変化に順応・対応できるクルマを作れているか、そしてドライバーのタイヤの使い方がキーポイントになります。

 それらを考えて、フェルスタッペンにはチャンスがあると思っています。その後ろをマクラーレンが追いかけてきて、さらにアルファタウリ・ホンダが続けば、かなり盛り上がる展開になると思います。本当に今回のテストの結果で期待値が上がりすぎました。ここまで期待が高まるのは、なんだかひさびさな感じですね。

 レッドブルとアルファタウリの2チームとも速さを見せたということで、今年のホンダ製パワーユニットもかなり期待していいと思います。テストでもトラブルは出ていないですし、馬力もあるように見えました。開発がいい方向に向かっていると思います。テストですので当然、馬力もまだフルで出しているわけではなく信頼性重視で進めていたと思うので、レースに向けてどれくらい引き出しを持っているかというのもひとつのキーポイントですね。

 いずれにしても、各チームの本当の勢力図が見えるのは開幕戦の予選Q3になると僕は思っています。昨年を見ていてもそこまでは本当にわからない。『いったい、どこで本気を出すの?』という感じでした。ですので、それまではクルマの動きでしか判断ができません。今年のテストではアルファタウリ・ホンダもクルマの動きが良かったですし、マクラーレンも悪くありませんでした。アストンマーティンもそんなに悪くないように見えましたが、トラブルが出て走り込めていないのが気になります。

 アルファロメオも速くてフェラーリ製パワーユニットが進化しているのも見てとれたので、今シーズンのどこかで本家フェラーリが活躍してくれるんじゃないかなという期待もできます。今年のF1は昨年以上に勢力図が凝縮されていて、見ている側には面白いシーズンになりそうですね。ホンダも今年がラストイヤーということで開幕は幸先よく飾ってほしいし、角田のデビューに向けてもかなりの追い風になっていると思います。

 最後、角田選手について。開幕前テストが昨年までの6日間から今年は3日間だけとなって日数不足を心配する声があるようですが、クルマが良ければ日数はあまり関係ないと思います。これは角田選手だけに限らず、ある程度の能力を持っているドライバーなら、良いクルマに乗ってしまえば、普通に走り初めでいいタイムは出せてしまいますからね。やはり難しくなるのは、クルマがコースや自分に合っていないなど何か問題を抱えてしまったときですね。そこで経験値や引き出しの多さ、そして仕事の仕方などの差が出てしまいます。

 テスト最終日に2番手のタイムを記録しましたが、角田選手の評価に関してはこれからです。今のところはFIA-F3、FIA-F2を含めてずっと良い流れで来ています。もちろん本人はいろいろな努力をしているなかで、ここまであまり大きく迷うこともなく、本当に自然体でどのカテゴリーでも上位を争えるところにいたということは、ドライバー的には最強のメンタルになります。

 角田選手はチームに溶け込んだり、海外に住むということも非常に上手くやっています。その環境に加え、ドライビングでもすごくナチュラルに自分のやり方で対応できているので、運転することに関してはあまり苦労を感じているように見えません。

 あとは開幕に向けて、本当に余計なことを考えずに自然体でコンディションを整えるだけです。今回デビューするアルファタウリというチームも、僕も前身のミナルディの時に経験していますが、若いドライバーにすごくウエルカムでチームも若いドライバーとの仕事の仕方に慣れています。そしてパワーユニットも日本メーカーのホンダを搭載していますし、角田選手をサポートするには、これ以上ないくらい完璧な体制です。これもある意味、自然体でいられる要因です。変なプレッシャーを感じすぎずに自然体でいることだけに集中していればいい。

 角田は自分のストロングポイントをよく分かっているドライバーなので、それが強みでもあります。細かく言うとブレーキングが上手いとか、オーバーテイクやタイヤマネジメントに優れているなどありますが、それらをすべてひっくるめて自分のストロングポイントを理解しています。自分自身を信じ切っているのもまた強みですよね。だから自然体でいられますね。
 
 開幕戦では、まずは予選でQ3に行ってほしいです。テストの感じを見ていると全然不可能ではないですし、仮に蓋を開けてみてアルファタウリのクルマのポテンシャルが足りないということになってしまっても、ピエール・ガスリーという非常にわかりやすいチームメイトがいます。

ガスリーとはテストでも全然対等に走れていますね。スピードという部分では何の遜色もないと思います。角田選手はレースの戦い方も上手いので、ガスリーの前にどうやって出るか。シーズン中ではなく開幕戦だからこそのインパクトがあると思うので、そこで角田選手は何かできればなと思います。

 すでに来年に向けて戦いが始まっています。レッドブルにステップアップするためにも、開幕戦から大きなインパクトを見せることができれば、本当にいろいろな流れができてくると思います。もっと言えばシーズン中に何かアクションがあるかもしれない。今から悠長なことを言っていてはダメだと思うし、角田選手本人も『最初はF1に慣れて〜』なんて思っていないはずです。今からもう戦いは始まっています。ただ、気負ってしまってもダメですけれどね。

 早くF1の進め方に適応することができれば、本当に普通に上位を走っている姿が想像できてしまいます。むしろ上位を走行できない理由が見当たらないです。本当に『何かやってくれるだろう』という期待をすごくしています。守るものも何もないと思うので、自然体で目一杯いってほしいです。

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<<プロフィール>>
中野信治(なかの しんじ)

1971年生まれ、大阪出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在は鈴鹿サーキットレーシングスクールの副校長として後進の育成に携わり、F1インターネット中継DAZNの解説を担当。
公式HP https://www.c-shinji.com/
SNS https://twitter.com/shinjinakano24


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