序盤、マゼピンはターン4で直進してしまい、ランオフエリアから抜け出さなければならなかった。このミスはその後に大きく響いた。早い段階で周回遅れにされ、セーフティカー出動によって周回遅れを取り戻すことができたが、集団に追いつく前にレースが再開され、大きく遅れを取ることになったのだ。

 シューマッハーは順調に走行していたものの、ハースのマシンはウイリアムズには全く太刀打ちできず、自分自身のレースに集中して走るしかない状況だった。しかし終盤に赤旗中断となり、残り数周に向けて改めてレースが行われることになり、そこで戦うチャンスが訪れた。

 ターン1でルイス・ハミルトンが直進し、後退したため、ハースの2台がメルセデスに先行するという珍しい状況になった。ハースのふたりは残り2周、ハミルトンを抑えきるだけの速さを発揮してみせた。マゼピンはチームメイトを抜き去り、そのまま前の位置を守り切るかに思われた。しかしシューマッハーはスリップストリームを利用して完璧なタイミングで反撃に出た。

 そこで危険な出来事が起きた。マゼピンはシューマッハーをブロックしようと、直線で極端に遅いタイミングでステアリングを切った。そのため、ふたりは時速200マイルで衝突しそうになったのだ。シューマッハの左フロントタイヤは、チームメイトの右リヤタイヤから数センチしか離れていなかった。もし接触していたら、あのスピードでは大事故になっていたかもしれない。

「今のは何なんだ! 正気か? あいつ、僕たちを殺す気かよ!」 シューマッハーは無線で憤り、マゼピンに向かって怒りを示す仕草をした。

2021年F1第6戦アゼルバイジャンGP ミック・シューマッハーとニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第6戦アゼルバイジャンGP ミック・シューマッハーとニキータ・マゼピン(ハース)

 レース直後、チーム関係者からは、マゼピンの行動を問題視している人々も多いと聞いたし、FIAレースディレクターのマイケル・マシも、この件について後日詳しく調査するという意向を示した。だが、チーム代表ギュンター・シュタイナーは、ドライバーふたりと話をし、この問題の収拾を図ったと主張している。

 ジョージ・ラッセルがリタイアし、ニコラス・ラティフィがペナルティを受けたため、ハースの2台は13位と14位という、今季ここまでベストの成績を上げた。その結果、コンストラクターズ選手権において、ハースはウイリアムズを抜いて9位に浮上。いくつかの問題がありつつも、ハースは最終的にはポジティブな結果を得て、第6戦を終えることになった。

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