それは次のオーストリアGPでも同じでした。タイヤは最もソフト寄りの3セットになりましたが、レース戦略は同じミディアム→ハードの1ストップ。第1スティントの時点でミックとニキータの差は広がり、ニキータはルイス・ハミルトン(メルセデス)、ランド・ノリス(マクラーレン)、バルテリ・ボッタス(メルセデス)の青旗を避けるタイミングとなる27周目ピットストップをして、フリーで走れるところでコースに戻りました。その後は44周目にまた青旗を掲示され、45周目に2度目のピットストップ。この青旗でまた20秒くらいのロスがありタイヤもダメになるので、それだったらピットストップをして新しいタイヤで走ったほうがいいということで2ストップになりました。

 序盤にニキータとのギャップを築いたミックは34周目にピットイン。この時点で既にマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)、ハミルトン、ボッタスには周回遅れにされていて、アウトラップでノリスに抜かれましたが、その後はしばらく単独で走り、クルマ的には厳しい状況ですが、直近のライバルであるウイリアムズのニコラス・ラティフィと同等のペースでした。ただC3でウイリアムズと互角に戦えたとはいえ、C4タイヤを機能させられずに苦労したので、うまく使えていないタイヤがあるというのも現実です。

ミック・シューマッハー(ハース)
2021年F1第9戦オーストリアGP ミック・シューマッハー(ハース)

 現状ではミックの位置がほぼウチのクルマでの限界です。ニキータが青旗を避けるために2度目のピットストップをする直前(44周目)のミックとの差は15秒くらいでした。この段階でニキータに追いついてきたダニエル・リカルド(マクラーレン)がミックに追いついたのは60周目と、青旗にかかるタイミングが大きく違うのです。この違いが、予定どおりの1ストップでレースを完走できたミックと、2度目のピットストップを行いミックより50秒ほど遅れてフィニッシュしたニキータの差になりました。

 レッドブルリンクは1周が短いので、どうしてもウチのクルマのペースでは『青旗→ラップタイムロス&タイヤ温度の低下→ペース悪化』という悪循環に陥りやすいのですが、ミックはそのロスを最小限に抑えたので、結果としてこれだけの差がつきました。レースでのタイヤの使い方と安定性は現状でのふたりの大きな差のひとつです。

 もうひとつ違うのは、予選での一発の速さです。オーストリアGPの予選ではミックもニキータもミスをせず、1回目のアタックから徐々にラップタイムを更新していきましたが、最終的にふたりの差はコンマ5秒でした。これがいまのミックとニキータの実力差だと思います。

ミック・シューマッハー(ハース)
2021年F1第9戦オーストリアGP ミック・シューマッハー(ハース)
ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第9戦オーストリアGP ニキータ・マゼピン(ハース)

 またオーストリアGPではノリスへのペナルティが話題になりましたが、僕の個人的な意見としては、不要なペナルティだったと思います。そもそもターン4のアウト側がグラベルだというのは全員がわかっていることで、そこでアウト側に行くというのはリスクを負うということです。確実に自分が前に出ていて、押し出されない位置を走れるのであればアウト側でも問題ないけれど、サイド・バイ・サイドか自分が少し後ろにいる状態で、イン側のクルマがアウトまできちんとコースを使って戦っていたら、グラベルに出るかアクセルを緩めて後ろに下がるかしかないのです。最初からアウト側で抜こうとしている人の責任だと思うので、何度か映像を見ましたが、ノリスは何も悪くなかったと考えています。

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