トヨタ自動車は30日に行われた2014年のモータースポーツ活動発表会の場で、今季からトヨタ自動車としてのモータースポーツ活動体制について強化を行ったと明らかにした。

　国内外で行うトヨタ全体のモータースポーツ活動については、これまで日本のトヨタ自動車モータースポーツ部が企画、開発、参戦、マーケティングを担う形でトヨタ・レーシング（13年活動はWEC、GT300、スーパーフォーミュラ等）、レクサス・レーシング（13年活動はGT500）の活動を行い、これに加えニュルブルクリンク24時間参戦や86/BRZ Race等“グラスルーツ”の活動を行うGAZOO Racingという体制が採られてきた。

　しかし、トヨタのモータースポーツ活動については、これまでヨーロッパの自動車メーカー等に比べてサーキットやモータースポーツを活用してのマーケティング力に欠けている部分が多く見られていた。例えば、TS030ハイブリッドで活動してきたWEC世界耐久選手権では、ル・マンでも富士でもコースサイドにはアウディやポルシェの看板ばかりで、トヨタのロゴはほとんど見ることができなかった。このあたりのモータースポーツを使ったプロモーション活動においては、他メーカーに対しトヨタは大いに苦戦していたと言える。

　また、活動全体を見てもトヨタ・レーシング、レクサス・レーシング、また近年豊田章男社長自らが推進するGAZOO Racingと3つのブランドがあり、活動範囲も成り立ちも異なる。豊田社長は現在のトヨタ、レクサス、GAZOOの活動について「メーカーの枠を超えてクルマファン作りを行ってきたGAZOO Racing、トップクラスのモータースポーツに参戦してきたレクサス・レーシングやトヨタ・レーシング。それぞれが別々の成り立ちをもつこれら3つの活動は、皆さまから見て少し分かりにくいものだったかもしれません」と振り返った。

　そこで、トヨタは新たに「従来のファンのみならず、より多くのお客様にモータースポーツの素晴らしさを理解いただくため」に、モータースポーツ活動に関する体制を強化することに踏み切った。新たに、豊田社長自らが会長を務めるグローバルマーケティング担当の『トヨタモーターセールス＆マーケティング（TMSM）』という会社を設立。モータースポーツに関する企画、参戦及びマーケティングに係わる機能を、トヨタ自動車モータースポーツ部から移管。モータースポーツ部は新たに『モータースポーツユニット開発部』と改称し、技術開発と参戦支援に特化するという。

「私はGAZOO Racingのオーナー兼ドライバーであり、レクサスのチーフブランディングオフィサー兼マスタードライバーです。そして、トヨタ自動車の社長でもあります。今回、それぞれの活動の立ち位置を明確にし直し、企画などを私自身が会長を務めるTMSM社（トヨタモーターセールス＆マーケティング）の傘下に集約し直します」と豊田社長は語った。

「トヨタ・モータースポーツの“ReBORN”。その出発点に立つための絶好のチャンスがまさに今であると考え、今回、その体制強化に踏み切ったわけでございます」

　今回の組織変更により、「営業部門が培ってきたさまざまな繋がりや施策を活用して、従来ながらのモータースポーツファンの方々だけでなく、一般のお客様にもモータースポーツがもっている見る楽しさ、操る楽しさを広めていけるよう努力して参りたいと思っております」と加藤光久副社長は語る。

「このことにより、モータースポーツを通じて得られた技術をより早く市販車にフィードバックするなど、もっといいクルマづくりに専念できることになります。今後、TMSMはレクサス・レーシング、トヨタ・レーシングをはじめ、GAZOO推進室が担当するGAZOO Racing、トヨタ関連会社が行っているモータースポーツ活動をまとめていくことになります」

　現代の世界のモータースポーツにおける自動車メーカーのあり方は、単純にサーキットでの速さや勝敗にこだわり、「勝てば終わり」では済まされなくなっている。いかに自メーカーの技術をモータースポーツを通じてファンにアピールし、かつモータースポーツを文化としてメーカーが協力し、盛り上げるかが重要になっている。今回のトヨタの体制変更は、それに対応するものだと言えそうだ。