今季、WEC世界耐久選手権に元F1ドライバーの中野信治が、ミレニアム・レーシングからLMP2クラスにフル参戦することになった。チームメイトはステファン・ヨハンソン、マイク・コンウェイという強力なトリオとなる。

　中野はフォーミュラ・ニッポンを経て、1997年にプロストからF1デビュー。翌年ミナルディに移籍した後、ジョーダンのテストドライバーを経て、2000年からはアメリカで活動。CART、インディカーに参戦した。2004年には一度日本に戻り、JGTC全日本GT選手権に参戦。05年からル・マンへの挑戦を開始しLMSにも参戦。ただ、それ以降はスポット参戦という形が多くなり、ここ数年はル・マン24時間のみやWEC富士戦のみの参戦という年が多くなっていた。

　そんな中、2012年のWEC富士では、スポット参戦ながらADRデルタのオレカ・ニッサンをドライブし、見事LMP2優勝を獲得。翌年デルタADRと改称したチームから大きな信頼を勝ちとり、13年もル・マンとWEC富士に参戦していた。

　そして2014年、中野はひさびさに世界の舞台で1年を通して戦うことになった。チームはデルタ・モータースポーツがオペレートするミレニアム・レーシング。ドライブするのは23号車オレカ・ニッサンで、中野、ヨハンソン、コンウェイという強力なドライバー陣営が敷かれた。

「ここ数年は年に1〜2回くらいしか走っていなかったので、こうして世界選手権を戦えるというのは本当に嬉しいですね。そうそうチャンスがある訳ではないと思います」と中野は語る。

「この年齢（42歳）になってこういうチャンスを、ある意味なんのコネクションもなしにもらうことができた。交渉も自分自身で行ってきて、何年かル・マンで戦い続けて来たことが、こうして望外の結果に繋がったのは嬉しいことだし、他のカテゴリーでも可能だと思うんです。こんな中年がやってるんだから（笑）、若いドライバーもチャンスを見つけに行ってほしいですね」

　今季中野と組むことになったヨハンソン、コンウェイについて中野に聞くと、「ステファンは大ベテランで、2008年にル・マンで一緒に戦っているので、彼のことは良く知っています。この世界でも長いし、レースの何たるかを理解しているドライバーだと思うので、すごく信頼できるチームメイト」と評した。

　コンウェイに関しても、「マイクは去年の、僕のもう1台のチームメイトだったんですが、近くで彼の仕事ぶりを見てきて、非常に能力が高いドライバーだと感じられましたし、彼のレースに取り組む姿勢も真面目だし、本当にストイック。もし自分がチームを持っていたら、彼を絶対にドライバーに使うな……というくらい」と非常に高く評価しているという。

「そんなドライバーと一緒に走れるのはすごく光栄なことだし、この年になってチームメイトからまた勉強できることもたくさんあると思う。僕の得意分野はクルマを作っていくことなので、マイクのスピードと、ステファンの経験と一緒にやっていけば、面白いものが作っていけると思います」

　近年、LMP2クラスは非常にレベルが高まっており、ミレニアム・レーシングのもう1台も、ジョン・マーティンとマクラーレンF1のテストドライバーであるオリバー・ターベイ、ベテランのファビアン・ジロワと強力だ。他チームも優れたドライバーが揃う。

「やっぱりいいところは走りたいと思いますけど、そう簡単に結果が望めるかというと、そういう訳ではないと思う」と中野は語る。

「ただ、そのクラスの中でも強豪チームにいるということは、上位のポジションを狙えるということ。僕個人としては全力で戦うことに集中することしか考えていないです」

　近年は日本に住み戦ってきた中野だが、シーズン序盤の2ヶ月ほどはイギリスに住み、チームとコミュニケーションをとるという。「僕はイギリスには3年くらい住んでいたので非常に懐かしい場所でもあるし、今年はやっぱりチャンスだと思うので、イギリスに戻ってまた初心に帰って、またレースに集中したい」と中野の気合も十分な様子。

　楽しみなチームメイト、勝てるチームと、ひさびさのフルシーズンを戦う中野は、強力な体制でWECに臨む。12年富士以来の優勝、そしてタイトル争いも不可能ではないはずだ。