――今年の例として、WECのスパ・フランコルシャン戦のフリープラクティスの終わりにランボルギーニがスパのオー・ルージュの手前で停止した際に多数の救助車両が現場に急行しましたが、どのような手順を踏まれたのでしょうか?

ハルター氏「スパで行われたのはいわゆる“レッドカー・エクササイズ”で、これは事故を想定しての演習が行われました。これはハイブリッド・ハイパーカーが事故を起こして、ドライバーが負傷し、マシンが高電圧安全の観点から危険であるという完全なシミュレーションのもとで行われた実地訓練のひとつです」

「この演習ではマーシャルの即時対応から始まり、レースコントロールによる事故管理、ドライバーの安全な救出、そして最後に車両の安全な回収までプロセス全体をシミュレートしました。したがってe-セーフティの代表である私の役割は、FIAのレースディレクターとつねに連絡を取りながら、地上でのすべての活動を監督する責任があります」

ハイブリッド車レースに不可欠な存在。目に見えない高電圧の電気から現場の人々を守るFIAe-セーフティ・デリゲートとは
2024年第3戦スパのフリープラクティスの終わりにはランボルギーニSC63を用いた救出訓練が行われた

――昨年のル・マンのテストデーで、7号車トヨタGR010ハイブリッドをドライブする小林可夢偉(トヨタ・ガズー・レーシング)選手がインディアナポリスでクラッシュした際に私は偶然にその場に遭遇しました。その救出方法をとても興味深く見学しましたが、どのような作業が行われ、どのような影響がありましたか?

ハルター氏「この時は事前に予定をしていた演習ではなく実際の事故でした。FIAレースディレクターのエドゥアルド・フレイタスは、この機会を利用して、スパ・フランコルシャンのランボルギーニの例で説明したすべての手順を実行し“レッドカー・エクササイズ”として扱うことにしました」

「ドライバーの小林可夢偉は幸いにも無傷だったため、この演習の手順を認識しながら一緒にその工程に付き合ってもらいました。マシンのシステムは損傷しておらず完全に機能し安全でした。訓練目的のため、実際に起きた事故として扱いながら確認作業をひとつずつ行いました。写真でわかるように、医療従事者と救出チームを漏電や感電から保護する為に隔離ブランケットが使用されていました」

――昨シーズンは、スパで起きた2号車キャデラックVシリーズ.Rの大クラッシュや、ドリス・ファントールがドライブしていたBMW MハイブリッドV8のクラッシュなど、大きな事故がいくつかありましたが幸い負傷者はいませんでした。これはハイパーカーの高い安全性を証明していると思います。

ハルター氏「WECの各車両には高電圧システムの状態を示す安全ライトモジュールが装備されています。この2件の事故では高電圧安全システムが完璧に機能し、医療および救助隊は、非ハイブリッド車が関与する事故の場合と同じように作業を進めることができました」

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